第25章 期末テストは個人戦!?
本校舎までの山道を駆け下り、舗装された道路に到着した。
「…もう4時半じゃん! 理事長いるのかな」
確かテスト前だから忙しいとか言ってたけど…と、あまり来たことがない玄関前に行くと、バッチリ理事長がいた。通りすがる人に会釈をされている。
「理事長先生! ……あ」
「はい、なんですか東尾さん。唐突に理事長先生とは。今まで浅野理事長だったでしょう」
さすがに物覚えいいな。
「ううん、校長先生と同じノリで理事長先生って言っちゃいました、ごめんなさい」
……こうでもしないとこの固い空気を抜けられない!!
それを聞いた理事長は一応納得したのか腕組みをして頷いた。
「待ってましたよ、理事長室へ行きましょう」
「え、ここじゃダメなんですか」
「ゆっくり話したいのでね」
てっきり山道登るのが面倒なのかと……でも、すぐ済む話ならこないだ呼び出された時にしてるはずだよね。
「こちらです。君は慣れてないでしょう」
「あっ、はい!」
理事長についていく。確かに全く慣れてない……というか知らない。1、2年の時にいたら知ってるんだろうけど。
皆が理事長の後ろをついていくE組(しかも他校の制服)を物珍しそうに見ている。
……と、私はそこで急ブレーキをかけた。
「ま、待ってください理事長」
「ん? どうかしましたか」
「あ、あの、理事長は私がE組な事を分かってますよね」
「ええ、存分に分かっていますよ」
「じゃ、じゃあ、今から目の前を通るクラスも分かってますよね」
「ええ、A組ですね」
…配慮しろや!!! まあこの人の性格ならやりかねないとは思ってたけどさ…
「ここしか通る場所がないんですよ」
別にそれが嘘でも本当でもいいけど、まだ私は野次に上手く対応できるほどこの学校に慣れていない。
足を止めていると、A組の中から声が聞こえてきた。
「君等がE組と賭けをしたってウワサになってるよ。5教科トップをより多く取れた方が…負けたクラスにどんな事でも命令できる?」
……浅野君の声だ……これは。
「わ、悪い浅野。下らん賭けとは思ったけどよ。い…E組の奴等がつっかかって来るもんで」
「……………良いんじゃないかな、そっちの方がA組にも緊張感が出る」
思わず聞き入ってると、理事長が私の腕をグイッと引っ張ってきた。そのまま手を握る。
「東尾さん、急いでいるので行きましょう」
「えっ」