第25章 期末テストは個人戦!?
「前原がほぼ、初めて……かもね」
寺坂は君付けのイメージがあんまり無かったし。
「……そうか」
前原はいつもより静かにそう言った。
「なんでここに来たの」
「千葉がここに弾丸置いてあるっていうからさ。テスト勉強の気晴らしに銃の練習でもやろうかと思ってさ」
……ううん、怒れない理由じゃん。
「じゃあ着替えるからそこで待っててよ」
別に扉越しなら見られることもないだろうし。
急いで脱ぎかけのブラウスを脱いで、美波桜のブラウスに手をかける。
……少しピンクがかった、ブラウス。
感傷に浸ってる暇はない。
大慌てでスカートをはき、セーターは…暑いもんね、着ない。ブラウスだけ一応着て……
「……あっつ…」
吐息とともに暑さを吐き出す。
やっぱ脱ごう。なしなし。
全部着替え終わり、さっきまで着ていた制服を仕舞う。
扉を開け、
「ごめん、遅れた」
「……ん、ああいいよ。女子の着替えなんてそんなもんだろ」
「想像してたんなら殺す」
「シテマセンッ!」
……うん、まぁそこまで言うならいいでしょ。
「どうも、お邪魔しましたー」
私は理事長の元へ行かなきゃなんないし。
「じゃあ、また明日ねっ前原!」
私はカバンを抱えて校舎から飛び出した。
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「……マジかよ、この状況であのテンションか…」
俺は東尾が立ち去った教室で1人しゃがみこんだ。
まさか東尾が空き教室で着替えているなんて…かなりの想定外だった。
『前原がほぼ、初めて……かもね』
表情は見えないが、かなり……くるものがあった。
こう、胸に。
『想像してたんなら殺す』
東尾のセリフを心の中で反芻する。
「……だったら、俺もう殺されてんな」
扉越しに聞こえた衣擦れの音も、暑そうについたため息も、まだ耳に生々しく残ってる。
…………嫌な生々しさじゃない。
「…暑すぎるっつの、アホ」
俺は誰にいうともなく、吐いた息と一緒に言葉を漏らした。
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