第25章 期末テストは個人戦!?
浅野學峯理事長、その人だ。
「……さっきの優秀な五英傑さんたちは帰りましたけど……」
「ああ、用があるのはその子達ではないよ。君だ」
……この人に関してはちょっと行動が謎。だって漫画やアニメではそこまで日常の描写がなかったし、基本あっちから声かけてくるし……。私が1番…いや、シロに引き続き2番目に予測がつかない人と言えるかも。
「私、に。何の用でしょうか…?」
「君は転校生だよね、という事は前の学校の制服を持っているか?」
……前の学校の……市立美波桜中学の?
確かトリップしてきた時制服でトリップしてきたから……
「はい、持っています」
「では明日それを着てきてくれるかな。放課後…テスト前ということで忙しいから…そうだな、本校舎玄関前にいる。探す必要も無いだろう」
……何で明日!? まあいいけど……ってか用これだけ!? そっちのがビビるわ。
「分かりました、明日の放課後ですね」
コクリと頷くと理事長は満足そうに去っていった。
「京香さん、理事長がわざわざなんて、珍しいですね」
「しかも用事が前の学校の制服を着てこいとか…へーんなの!」
「……そう、だね……」
私はすこし胸騒ぎがした。
理事長は頭がいい。大統領とか出来そうといつだったか言われてるし……。
もしや、私のトリップの何かに……気付いた?
いやいや、でもこんな突飛なこと、気付くというか想定する人なんて全然いないはず……
「……制服虫干ししないと、じゃあ帰るね! 皆、また明日!」
「うん、東尾さんまた明日」
皆に軽く手を振り、私は図書館、そして本校舎を後にした。
△
「制服、制服っと……あった!」
これだけは捨てるもんかと思ってそっくりそのままとってある。まだ寒かったから冬服仕様だけど……長めのブラウス、黒いブレザー。セーターは紺色で、胸元にエンブレム。緑色のリボンは少しだけ黄色のチェックがかかっている。スカートは地味な灰色。あとはあの日に履いてたタイツ。
「……久しぶり」
この制服に身を通すのは。……見るのもか。
明日はいつもの制服を着てって、美波桜の学校のやつは持ってって……どこかで着替えればいっか。
もう夕日が差してるけど、日はまだまだ長い。7時位までは太陽は沈まないだろう。
「……よしっ」
小さくガッツポーズをして、私はブラウスをハンガーにかけた。