第25章 期末テストは個人戦!?
私が心の中で舌をうげーっと出してる間にも会話は進む。
「面白い、じゃあこういうのどうだろう?」
……ってか小山!! 愛美ちゃんの頭叩くな!! 荒木もうちのクラスの(ほぼ唯一と言っていい)イケメン磯貝くんの頭を気軽に触るな!
「俺等A組と君等E組。5教科でより多く学年トップを取ったクラスが…負けたクラスにどんな事でも命令できる」
!!
荒木の言った案は、これからのE組の未来を左右する大事な一言だ……!
「どうした? 急に黙ってビビったか? 自信あるのは口だけかザコ共」
瀬尾が渚君にズシッとのりかかる。お前も気軽に触るな! 隣に渚君のお相手(私が思ってるだけだ)の茅野ちゃんがいるっていうのにいいい!
「なんならこっちは…命かけても構わないぜ」
それまでさほど抵抗していなかった皆だったが、瀬尾のその言葉を聞いた瞬間、体が動いた。
各々ペンや定規や指で、近くにいたA組五英傑の首元に刺す。ピタッと添え、直前でストップ。
「命は…簡単に賭けない方がいいと思うよ」
渚君の申し訳なさそうな顔が余計響く。
「じょっ…上等だよ受けるんだなこの勝負!! 死ぬよりキツい命令を与えてやるぜ!!」
慌てて立ち去るA組と、机に悠々座るE組を、図書館にいる皆が見つめた。
……あーあー、こりゃ全校に知られちゃうわ。
私はようやく見つけた小栗虫太郎の本をそっと手に取り、みんなの元へ駆け寄った。
「どうしたの皆、奥の方にいる私にまで聞こえてきたけど……」
何も無かったかのように声をかける。
「京香! 聞いてよ〜、A組の…五英傑だっけ? あいつらが絡んできてさ! なんか変な賭けする事になったみたい」
「死ぬよりキツいってどんだけだよ」
「まあでもうちの担任なら『仕方ない、どんな相手でも殺る気でやりましょう』って言うだろうね〜」
和やかに笑うE組を、どこか驚きの目で見つめる周りの人々。
ああ、もうこの時点で皆強くなってたんだな……あらゆる意味で。
「そうなのか、まあ残り時間も目一杯勉強頑張ってね! 私は借りたら帰ろうかと思って……」
と帰りの身支度をしつつ話していると、そこにあの久しぶりに聞く低音ボイスが聞こえた。
「東尾さん」
……え?
皆の視線が図書館入口にいく。
「お久しぶりです、東尾京香さん」
「りっ、理事長ォ!?」
そう、そこにいたのは。