第23章 裏切りは静かに火を燃やす
私が急いでカルマ君の後ろから走っていくと、殺せんせーはずぶ濡れになっている所だった。
どうやらイトナ君の奇襲にかかったらしい。
「殺せんせー!!」
思わず叫ぶ。
「はい、計算通り。久しぶりだね殺せんせー」
……シロ!!!
私にとっても宿敵の相手…だ。
「ちなみに君が吸ったのはただの水じゃない。触手の動きを弱める成分が入っている。あの坊やにプール上流から薬剤を混入させておいた。
前にも増して積み重ねた数々の計算。他にもあるが戦えばすぐわかるよ」
「さぁ兄さん。どっちが強いか改めて決めよう」
イトナ君の瞳がギラりと光った。
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「皆!」
「え!? 京香さんプール入ってたんじゃ……」
私の呼びかけに愛美ちゃんが驚く。
「ごめん、影から見てた」
「え、何で!?」
……まさか流される事が分かってたからなんて言えないよね……
「それよりも、殺せんせーどうなの?」
「う…なんか、ヤバイかもです」
私は愛美ちゃんが指さす方に目を向けた。
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「触手の数を減らしその分パワーとスピードを集中させた。単純な子供でも操りやすい」
イトナ君がバナナをモグモグ食べている。
先ほどの激闘のエネルギーを再度取り戻そうとしているようだ。
「片や君は全身濡れてますます動きが鈍ってきた。『心臓』を破壊するのも時間の問題だ」
シロの淡々とした説明とその場にあった現状は的確だ。
「まじかよ…あの爆破はあの2人が仕組んでたとは」
「でも押されすぎな気がする。あの程度の水のハンデはなんとかなるんじゃ?」
皆が不思議そうに話すと、後ろの岩から寺坂がやってきた。
「水だけのせいじゃねー」
「寺坂…!」
「力を発揮できねーのはおまえらを助けたからよ。見ろ、タコの頭上」
寺坂に言われて見上げる。頭上には……
「!!」
「助け上げた場所が触手の射程範囲内に!!」
「特に…ぽっちゃりが売りの原さんが今にも落ちそうだ!!」
殺せんせーが必死に助けたからだろう。
岩の隙間に村松くん。木に吉田くん。そして枝(わりと細め)に原さん。原さんの枝はすでにミシミシと悲鳴を上げている。
「あいつらの安全に気を配るからなお一層集中できない。あのシロの奴ならそこまで計画してるだろうさ、恐ろしい奴だよ」
寺坂の冷静な言葉に前原くんがつっかかる。