第23章 裏切りは静かに火を燃やす
「ケッ、別にいいぜ来なくても。そん時ゃ俺が賞金百億独り占めだ」
そして寺坂は再度教室を出ていった。
「…なんなんだよあいつ…」
「もう正直ついてけねーわ」
村松くんと吉田くんが呆れ顔で話す。
「私行かなーい」
「同じく」
「俺も今回はパスかな」
そんな皆の声に反旗を翻したのはターゲットである殺せんせーだ。
「皆行きましょうよぉ」
「うわ!? 粘液に固められて逃げられねぇ!!」
…さっき泣いてた…いや、鼻から粘液出してたからそれが固まり始めて……すごい足が動かしにくい。スライムみたいになってる…。
「せっかく寺坂君が私を殺る気になったんです。皆で一緒に暗殺して気持ち良く仲直りです」
「まずあんたが気持ち悪い!!」
殺せんせーの顔は粘液が溶けすぎて目が見えなくなっている……キモイ。
「……わかったよ殺せんせー、行こう」
私は諦めて立ち上がった。
……私は、このプールに入らない。
殺せんせーがもし1人でも助けられない様な状況になってしまったら、私はきっと責任感で死ぬ。
それでも、見守ろうと思うんだ。
この思惑の行く末を。
────────
「よーしそうだ!! そんな感じでプール全体に散らばっとけ!!」
寺坂が上から指示を出す。
あの後結局皆プールに集合。私は岩陰から見守っていた。……最近気配を消すのが上手くなってる気がする……
「疑問だね僕は。君に他人を泳がせる器量なんてあるのかい?」
「うるせー竹林とっとと入れ!!」
「フヒィ!!」
あーあー竹林君可哀想に……。
「すっかり暴君だぜ寺坂の奴」
「ああ、あれじゃ一年二年の頃と同じだ。
学年中の嫌われ者。浮きすぎなんだよこの学校じゃ」
皆がヒソヒソと話していた時、殺せんせーがサッと来た。
「なるほど、先生を水に落として皆に刺させる計画ですか。それで君はどうやって先生を落とすんです? ピストル一丁では先生を一歩すら動かせませんよ」
…うん、その通りなんだけどこの計画には影の暗躍者がいる。それだけが、殺せんせーの『ミス』であり『見落とし』だ。
「……覚悟はできたかモンスター」
「もちろんできてます。鼻水も止まったし」
2人が向き合う。
寺坂は銃を持ち、殺せんせーは顔に横縞を浮かべた。