第23章 裏切りは静かに火を燃やす
「寺坂君!! ヤンチャするにも限度ってものが…」
「さわんじゃねーよモンスター」
しかしその触手は跳ね除けられた。
「気持ちわりーんだよ、テメーも、モンスターに操られて仲良しこよしのテメーらも」
モンスター、仲良しこよし……
……そんなつもりはない。
私達はもっと、言葉では上手く表現出来ない関係のはずだ。
クラスメイトで、担任で、暗殺者とターゲットで……
「何がそんなに嫌なのかねぇ…」
カルマ君が独り言のように呟いた。
「気に入らないなら殺しゃいいじゃん。せっかくそれが許可されてる教室なのに」
「何だカルマ、テメー俺にケンカ売ってんのか。上等だよだいたいテメーは最初から…」
喧嘩腰になる寺坂に、カルマ君はガッと口元を掴んだ。
そのまま妖艶な仕草で自分の口元に人差し指をやる。所謂『シー』、のポーズだ。
「ダメだってば寺坂。ケンカするなら口より先に手ェ出さなきゃ」
「…ッ!! 放せ!! くだらねー!!」
手を振り切り、歩いてドアをピシャリと閉める。
「…なんなんだ、アイツ」
「一緒に平和にやれないもんかな…」
皆が思わずため息をつく。
浮きかけている寺坂への態度なんてこんなもんだ。
横にいる殺せんせーはただ黙っている。
モンスター、と久しぶりに呼ばれたことに傷付いているのか、それとも……
私は考えにふける殺せんせーを、ただ見ていた。