第23章 裏切りは静かに火を燃やす
「うわ、殺せんせー顔フニャフニャじゃん。どしたの」
「東尾さん、いやぁカルマ君に水をかけられてしまいましてね」
前回の件で殺せんせーが水が苦手なのはクラスに把握されている。でもカルマ君の事だから嫌がらせの範囲だろうな。
「じゃあ私もかけちゃおーっと」
「にゅっ、にゅやああああああああああ!?」
「愛美ちゃん、へい風船!」
「ふ、風船!? ……ってあ!」
「水風船だよ!」
「ちょ、ちょっと皆さん! 先生で遊びすぎです!!」
今、本気で殺す気なんてない、ただ遊びたい!
めいっぱいプールで遊んだ後は着替えて教室へ。
「うお、マジかよ殺せんせー!?」
「この前君が雑誌で見てた奴です。丁度プールの廃材があったんで作ってみました」
教室では吉田くんが興奮した様子で殺せんせーが作ったバイクを見つめていた。
「……何してんだよ、吉田」
そこに寺坂登場。
「あ、寺坂。い、いやぁ…バイクの話で盛り上がっちまってよ、うちの学校こーいうの興味ある奴いねーから」
殺せんせーしっかりヘルメットとライダースーツまで着て……
「ヌルフフフ、先生は大人な上に漢の中の漢、この手の趣味もひととおり齧ってます」
バイクも出来るとか殺せんせーいつ免許取ってんのか…いや取ってなかったりして……。
「しかもこのバイク最高時速300km出るんですって、先生一度本物に乗ってみたいモンです」
「アホか、抱きかかえて飛んだ方が速えだろ」
クラスに笑いが広がる。
しかしその瞬間寺坂がバキッとバイクを蹴飛ばして壊した。
「にゅやーッ!!?」
殺せんせーは可哀想に泣き出してしまった……
「殺せんせー大丈夫?」
私も一応声をかけた。さ
「い、いや直せばなんとかなるんですが…頑張ったのに…このフォルム……」
「何てことすんだよ寺坂!!」
「謝ってやんなよ!! 大人な上に漢の中の漢の殺せんせー泣いてるよ!?」
ブーブーとブーイングが湧き上がる。
「…てめーらブンブンうるせーな、虫みたいに」
寺坂が机の中を漁った。
「駆除してやるよ」
出したのは……缶、だ。
そのまま地面に叩きつけ、煙がボワッと巻き上がる。
「うわっ!!」
「何だコレ」
「殺虫剤!?」
煙が出し切られ、霧がある程度晴れると、殺せんせーががしっと寺坂の肩を掴んだ。