第23章 裏切りは静かに火を燃やす
とある日の朝ー……。といっても前回のイケメグの回からそう経ってない時。
ささいな事件が起こった。
「おい皆来てくれ!! プールが大変だぞ!!」
そう駆け込んで来た岡島くんの声につられ、皆はプールへと足を運ぶ。
「…あーあ、これはひどいね……」
私もため息をついた。
木の板はバキバキに割られ、プールのコース分けのブイはふよふよとその形を保たずに浮いている。
「…ッ、メチャメチャじゃねーか…」
「ビッチ先生がセクシー水着を披露する機会を逃した!!」
いや、それはわりとどうでもいい。
「ゴミまで捨てて…ひどい…誰がこんな事…」
愛美ちゃんが困ったように缶を拾った。
…私は無意識に目をやった。寺坂グループの、3人に。
「あーあー…こりゃ大変だ」
「ま、いーんじゃね? プールとかめんどいし」
わっかりやすい……
私と同じように3人を見ていた渚君に、寺坂は気付いたらしい。
「ンだよ、渚。何見てんだよ。まさか…俺らが犯人とか疑ってんのか? くだらねーぞ、その考え」
寺坂は渚君の首を軽く絞め上げるように持ち上げたが、殺せんせーによってその行動は止まった。
「まったくです、犯人探しなどくだらないからやらなくていい」
と言い切ったからだ。
そのままマッハのスピードでプールを直し、みんなに声をかける。
「はい、これでもとどおり!! いつも通り遊んで下さい」
…うん、こりゃ意味無いわ……
私が見ていることにも気がついたらしい。寺坂がこちらに近付いてきた。
「なんだよ、お前も文句あんのかよ」
…証拠がない以上、特に何も言えない……。
「…寺坂、吉田くん、村松くん。何かやったんだったら…これからもやるつもりなら、止めた方がいいよ」
俯きながらそう言うと、
「おいお前何で俺だけ呼び捨てなんだ」
と論点がズレた事を言ってきた。
「……アンタだけ君付けする気にならないから」
なので素直に言っておいた。
「…そうか」
すると寺坂も素直に引き下がる。お前何が言いたいんだ……。
「ねえ、私もうプール行くよ? あんたらも早くE組に溶け込みな、ね」
それだけ残して、私は愛美ちゃんの方へ走った。