第22章 水に溺れる夏
ドドドとものすごい音を立て、マッハで桶を持ち自分に水がかからないように周りの水を避けている。
それが波のプールになっている。
「な、何これ!! 波はこっちに来てんのに引きずりこまれる!!」
心菜の方にもその波はいったが、イケメグ基、魚魚は声を静かに張り上げた。
「落ちついて!! 泳ぐ方向こっちに変えて!!」
「…え!? 流れるの止まった…」
「離岸流って言ってね、岸に反射して沖に出ていく流れがあるの。前に心菜が溺れた原因はこれじゃないかな」
つまり海の水が岸にぶつかってまた海に戻っていく流れ。
「そういう時は無理に岸に向かわずに岸と平行に泳いで流れから抜ける。とにかく絶対パニックにならない事!」
そう言って教えるイケメグと、言われる心菜に殺せんせーこと魚キングは
「知識だけ身につけてもダメですよ。朝まで死ぬほど泳いで…魚のような流麗な泳ぎを身につけましょう」
……人間にそれが可能だと思ってるのか!!? 不眠不休になっちゃう……けど。
私は上からちらりとみんなを見た。
…まあ、ちょっと位寝不足でも、大丈夫かな。
それに、少しは痛い目にあってもらわないと。
心菜はそれから朝までずっと泳いでいた。
朝日が昇る前にはベッドに入っていたけど。
私も安心して水遊びをした。
昼間の水遊びもいいけど、夜の水遊びも幻想的で良いな。
私は夜空を見上げて水に浸かった。
後日、殺せんせーと私達3人はプールの縁に集まった。
どうやら心菜はかなり泳げるようになったらしい、これで心置き無く切り捨てられるというもんだ。
「これで彼女に責任は感じませんね、片岡さん。
これからは手を取って泳がせるだけじゃなく…あえて厳しく手を離すべき時もあると覚えて下さい」
そう言った殺せんせーに、イケメグは爽やかに笑った。
「はい、殺せんせーも突き放す時あるもんね」
渚君と茅野ちゃんは目を合わせた。
わかんなかった、殺せんせーの水苦手疑惑について。
私はただ殺せんせーを見つめていた。
するとそんな私に殺せんせーは気付いて、ニヤリと笑った。
「ああ、それと」
そして思い出したかのようにサラッと言った。