第22章 水に溺れる夏
「察しの通り先生は泳げません。水を含むとほとんど身動きとれなくなります」
イケメグと渚君、茅野ちゃんが目を見開いた。
「弱点としては最大級と言えるでしょう。とは言え先生は大して警戒していない。落ちない自信がありますし、いかに水中でも片岡さん1人なら相手できます」
殺せんせーの触手はグググ、と膨れたが、殺せんせーは自慢げに言う。
「ですから、皆の自力も信じて、皆で泳ぎを鍛えて下さい。そのためにこのプールを作ったんです」
こんな経緯で、E組にプールが出来た。
他の3人が去ったプールで、殺せんせーが私に話しかけてきた。
「最近、君は怖がらなくなりましたね。こちらの世界の人に関わることを。今回のプールの着るものだって、君が作ってくれましたし」
私もプールに裸足の足を浸し、座る。
「……うん、なんか慣れたというか…こっちの世界が、すごく楽しい事をやっと認められた気がするの」
思えば最初は節目節目にずっと考えていた。
帰らなくちゃ、早く帰りたい。
私の中で漫画の1話が終わる度、思っていた。
でも、長く時間が経つにつれて、こちらをちゃんと現実として受け入れられるようになった。
「殺せんせー、先生は烏間先生みたいにカッコよくないけど……すごく、いい先生だよ。私がここにいる理由も、いたい理由も、殺せんせーが作り上げた絆があるE組だから」
「にゅやっ、先生烏間先生はカッコイイのに私はカッコよくないんですか!?」
「あ、やべ」
「にゅやあああああああ!! 東尾さん!!」
「えへ、にっげろー!!!」
マッハから逃げられる訳はないんだけど、それでも私は裸足で逃げ出した。
……逃げる途中、寺坂グループを見た。
あいつらのお手入れも、もう少しだな。
そんな事を思って私は校舎へ駆け出した。