第22章 水に溺れる夏
しかしそれを振り切るように心菜の背中をグイ、と押した。
「…はい、いいから歩く歩く!! もっと体を温っためなくちゃ!」
「なっ…なによぅ、魚の分際で!!」
私は景色がよく見えるように木の上に登った。
……最初ここに来た頃より、随分身軽になったな。
「ところで殺…魚キングは水に入らないの?」
渚君の問に殺せんせーはギク、と肩を揺らした。
「い、いや先生、今日のプールは焼きに来ただけだし」
「真夜中だよ今。入らなきゃ彼女に泳ぎ教えらんないよ」
殺せんせー、少しだけ焦ってるな、ちょっと面白い。
「それもそうです、では入りますか」
下にいる3人はだいぶ驚いてるけど、私はニマニマと下の様子を眺めた。
「さて、まずは基本のけのびから」
スイーッと水に入った殺せんせーは、明らかにけのびではない。
「この時のために開発した先生用水着です。完全防水でマッハ水泳にも耐えられます」
その言い方はもう水ダメですって言ってるようなものじゃないかな……?
「数々の秘泳法をご覧あれ」
殺せんせーはそう言ってヒュッと水の中を泳ぎ始めた。もちろんマッハで。
「え…」
殺せんせーの力によって流れるプールの完成(かなり威力高い)。
当然水が苦手な心菜は慌てたが、イケメグは冷静に指示を出した。
「もがッ、流され…」
「心菜慌てない!! 端っこの方は大した流れじゃないから! 海での泳ぎ方を練習するよ、基本はプールと一緒!! 手のひらに負荷を感じながらテンポ良く!!」
死にそうになりながらも必死に泳ぐ心菜。結構な水流なはずだ。そんな状況の中で普通に喋れるイケメグ本当にイケメン……惚れそうだ……。
「海では自分の位置がわからなくなり易いから…ときどき平泳ぎに切り替えて確認して、またクロールに戻る!!」
一方タコキング基殺せんせーは責められていた。魚太と魚子に。
「水着とかズルいよ魚キング!!」
「そーだよ!! 生身で水に入れるかどうか見たかったのに!!」
そんな2人に気づいた殺せんせーは、即座に
「入れますよ、生身でも」
とプールに再度飛び込んだ。水着を脱いで。
「…え?」
殺せんせーの周りにうっすら波が立っている。
「水に…生身で入ってる?」
「…いや、違う」
……ここから見ると面白い光景になってるよ、殺せんせー。
「マッハで周りの水を掻き出してる!!」