第22章 水に溺れる夏
烏間先生との訓練はあの後2時間ほど続いた。
アスレチック、銃、基本の柔道etc。
「俺はこれから会議がある。鍵は閉めなくていいから、支度を終えて帰ってていい。それじゃあ」
また明日、の意味を込めて手を上げる烏間先生を、私はくたくたな体で見送った。
「バ、バケモンだな、烏間先生……あの後会議とか眠くなんないのかな……」
そのままゴロンと寝転ぶ。
でも元々ほぼ不眠不休みたいなもんだし……体が心配だ。
疲れないのか、この訓練。と以前聞いたことがある。
烏間先生は真顔で言った。
『この程度なら準備運動だ』。
……いやあ、衝撃だったな……どうやら教官もやった事がある烏間先生には、マンツーマンの訓練位御茶の子さいさいらしい。
「あ、京香!」
……ん? この声は……
「茅野ちゃん!? な、なんでここに……」
上から私の顔を覗き込んだのは空色に映える緑色。
茅野ちゃんだった。
続いて渚君と殺せんせーものぞき込む。
……わぁ、カラフル。
「今ね、片岡さんの水泳見てて……ってあ」
茅野ちゃんが慌てたように口を塞ぐ。
……確かこの後の流れって……
「何、イケメグを尾行しようとしたの?」
「あ、あはははは……」
茅野ちゃんがてへ、と頭を搔く。
「そこで倒れてる東尾さんを見つけたという訳です」
殺せんせー(変装モード)が説明。
「駅前のファミレスに行くっていうんだけど……表情が暗くて、友達に会うって聞いたんだけど……」
…何だかんだで、友達思いだな、渚君も。
「見た限りにはついて行くしかないけど、あっちではほとんど黙ってるからね」
「う、うん!」
まさかこの場面に会うとは思ってなかったからな、でも会ったからには…最後まで見たい。
そんな自分の感情に従ってもいいのだろうか。
頭の中の烏間先生が『いいだろう』と言ったので、私は殺せんせーの大きい体の後ろについていった。