第22章 水に溺れる夏
「烏間先生!」
「……ああ、君か。プールは終わったのか?」
「いえ、プールはとっくに終わってて……まあいいや。訓練、お願いします!」
どうやら最近出来たアスレチックでの運動。
「岡野さんは毎朝ここで運動しているぞ」
「え〜!? すごいですね……シロさんが来た日から皆、暗殺に対してやる気がすごいですよね!!」
「!! ……そう、だな」
烏間先生は少し驚いたあと静かに笑った。
「君はあまり個人で暗殺をしに行かないな」
うんていに手をかけながら話す。
言っておくけどこれ、かなりキツいからね!! しかも話しながらとか!!
「は……っはい。そうですね。クラス全体での暗殺はできるだけ参加するんですけどっ……」
手を次の棒にかけて体をぶら下げる。
「何故だ?」
それはこっちのセリフだ!! なんでさっきまで私のすぐ前にいたのにもううんてい終わってるのー!?
……まあそんな言葉を喉元に引っ込め。
「うーん、前も言ったんですけど…私はこのクラスを静観したかったんです。まさかこんな長い時間こちらの世界にお世話になるとは思いませんでしたし……」
「確かに、そうだな」
やっと3分の2を過ぎ、また手を前に出す。烏間先生は律儀に待っていてくれているので話しながら急ぐ。
「だから、出来るだけ暗殺には関わりたくなくて……人を、クラスのみんなを、守りたいんです。私が来た事によって少しだけ変わってしまったかもしれない未来で、危険な事が起これば、それは私の責任ですから。もし、そんな事が起こった時に、『最善は尽くしました』って言えるようにしたい」
……そう、多分それが私の訓練を頑張る理由。
うんていを終え、次のアスレチックに突入。
ううん、この説明がしにくいアスレチック……とりあえず先に進む。
全てのアスレチックを終え、地面に降りると、烏間先生が笑っていた。
「タイムは上々だな。君の考えも悪くないが、自分の感情のままに動くのもいいと思うぞ」
次だ、というように烏間先生は後ろを向いた。
……烏間先生も、鷹岡の事件から少し変わった気がする。なんというか、スッキリした……感じ?
「来ないのか?」
いつまでもついてこない私に痺れを切らしたらしい。
「あっ、行きます!!」
なんか今日は忙しいな!! 私は今日何度目になるかわからない小走りを始めた。