第22章 水に溺れる夏
「ヌルフフフ、景観選びから間取りまで自然を活かした緻密な設計。皆さんにはふさわしく整然と遊んでもらわなくては」
殺せんせーの弱点?22、プールマナーにやたら厳しい。
そんな事を言う殺せんせーに倉橋さんは
「カタいこといわないでよ殺せんせー、水かけちゃえ!!」
と無邪気に水をかけた。
「きゃんっ」
……今の声って殺せんせーから出たの?
こう、すごい、乙女。
「えっ…」
「何、今の悲鳴」
かけた倉橋さんも驚いて止まっている。
何かを察したカルマ君が静かに泳いで殺せんせーが座っている高い椅子の元へ向かった。
がしっと足を持ち、そのまま揺らす。
「きゃあッ、ゆらさないで、水に落ちる!!」
やっとの思いで椅子から抜け出した殺せんせーは、深呼吸を繰り返している。
……もしかして? 皆が殺せんせーを見つめる目は、アサシンの目だ。
「…いや別に泳ぐ気分じゃないだけだし。水中だと触手がふやけて動けなくなるとかそんなん無いし」
そして三村くんが殺せんせーに質問。
「手にビート板持ってるじゃん、てっきり泳ぐ気満々かと…」
「これビート板じゃありません、ふ菓子です」
「おやつかよ!!」
……殺せんせーの弱点23、泳げない。
E組の皆は……悟った。
今までの中で一番使える弱点だ、と。
妙な緊張感の中、それを壊すかのように茅野ちゃんが浮き輪から派手に落ちた。
「! あ、やば、バランスが……うわっぷ!!」
「ちょっ…バカ何してんだ茅野!!」
「背ぇ低いから立てねーのか!!」
ひー、とバシャバシャもがく茅野ちゃん。
私もあまり泳ぎは上手ではないし……ここで助けるのは、『あの人』だもんね。
「かっ、茅野さん!! このふ菓子に捕まって…」
おろおろする殺せんせーを横目に『あの人』は飛び込んだ。
茅野ちゃんの頭をぐいっと持ち上げ、スーッと水の中を泳ぐ。
「はい、大丈夫だよ茅野さん。すぐ浅いとこ行くからね」
「助かった…ありがとう片岡さん!!」
そう、イケメグだ。
水の中からザパッと上がったイケメグはウインク。
「…ふふ、水の中なら出番かもね」
そして、いたずらっけのある顔でにっこり笑ったのであった。