第22章 水に溺れる夏
コースの中では誰かがクロールを泳いでいる。
その外では暗殺バドミントンで使う殺せんせーボールで遊ぶ女の子と、水をかけあう男子達。
「楽しいけどちょっと憂鬱。泳ぎは苦手だし…水着は体のラインがはっきり出るし」
そう言ってため息をつくのは茅野ちゃん。どこから持ってきたのか浮き輪に入り、ボールを抱えている。
「大丈夫さ茅野。その体もいつかどこかで需要があるさ」
「…うん、岡島君。二枚目面して盗撮カメラ用意すんのやめよっか」
「にしても修学旅行の時も思ったけど、京香スタイルいいよね」
「は?」
莉桜から振られた話に思わずぽかん。
残念ながら可愛い女の子(夢小説)みたいに『ふぇ?』なんて言える性格ではない。
「胸大きいのは桃花だけど〜」
「岡島君がいる前でそんな話やめなさい」
私はため息をついて莉桜に水をかけた。
「やったな!? えい!」
途端にバシャバシャと掛け合いが始まる。
途中でぶつかったのは渚君だ。
「あ、ごめん」
「ううん、大丈夫だよ」
そんな渚君に一言(無駄な)言葉を言うのは莉桜。
「渚…あんた、男なのね」
「今さら!?」
「…まぁ仕方ない」
水着姿を見たのは初めてらしい。
私も渚君をじっと見た。
「ひ、東尾さんまで!!」
「あ、ごめん渚君」
悪気はないんだけど確かに男なんだな、的な。
「おい東尾! 1枚撮らせてくれ!」
「絶対やだ」
声をかけてきた岡島くんを適当にあしらうと、殺せんせーがピピピピッと鋭く笛を鳴らした。
「木村君!! プールサイドを走っちゃいけません!! 転んだら危ないですよ!!」
「あ、す、すんません」
どうやらビート板を持ってプールサイド(岩)を走っていたらしい。
その後も殺せんせーの笛は鳴り止まない。
「原さんに中村さん!! 潜水遊びはほどほどに!! 長く潜ると溺れたかと心配します!!」
「は、はーい…」
「岡島君のカメラも没収!! 狭間さんも本ばかり読んでないで泳ぎなさい!! 菅谷君!! ボディーアートはふつうのプールなら入場禁止ですよ!!」
ピーピーうるっさい!!!
「いるよねー、自分が作ったフィールドの中だと王様気分になっちゃう人」
「うん…ありがたいのにありがたみが薄れちゃうよ」
当の殺せんせーはルンルンとかなり嬉しそうだけど……。