第22章 水に溺れる夏
そういえば、と前置きを置いて私の後ろを歩くカルマ君が渚君に話しかけた。
「渚君、この前すごかったらしいじゃん。見ときゃ良かった渚君の暗殺!」
「本トだよー、カルマ君面倒そうな授業はサボるんだから」
茅野ちゃんの言葉に含まれているのはカルマ君への授業に出ろ、という意味と渚君がかっこよかったよ、の尊敬と好意だ。
「えー、だってあのデブ嫌だったし」
「でもそしたら今回のカルマ君は勘がよかったって事じゃない?」
確かここはマンガに入らなかったよな、と頭の中でマンガをめくる。
「そーかな、だといいけど」
カルマ君が舌を出して笑うと、殺せんせーがタイミングを見計らったかのように言い出した。
「さて皆さん! さっき先生は言いましたね、マッハ20でもできない事があると。そのひとつが君達をプールに連れて行く事。残念ながらそれには1日かかります」
「1日…って大げさな。本校舎のプールなんて歩いて20分…」
磯貝くんが笑って伝えると、
「おや、誰が本校舎に行くと?」
殺せんせーが企んでいる顔で言った。
殺せんせーの後ろに見えるキラキラとした何か。
水が流れる音がほんの少し聞こえる。
それに気付いた皆は一斉に駆け出した。
木をかき分け、草を飛び越え、本来小さい沢があるはずのそこには。
大きいプールがあった!!
水は光り輝き、さらさらと流れる水の音が心地いい。
「なにせ小さな沢を塞き止めたので…水が溜まるまで20時間!バッチリ25mコースの幅も確保。シーズンオフには水を抜けば元どおり。水位を調整すれば魚も飼って観察できます」
きっちり整備されたプールを前に、殺せんせーはドヤ顔で説明。
「制作に1日、移動に1分。あとは1秒あれば飛びこめますよ」
今か今かと待ちわびていたクラスでも体育会系のメンバーは上のジャージを脱ぎ、プールに飛び込んだ。
「い…いやっほぉう!!」
バシャンと水が跳ね、私は思わず目をつぶった。
「冷た!」
まだジャージを脱いでないのでしみてしまう。
あわあわと脱いで私も飛び込んだ。