第21章 鷹岡襲来の巻
ふいに神崎さんがパッとこちらを向いた。
「京香さん! ほんとに、本当にごめんなさい……! 痛かったよね!?」
こちらこそ、ごめんなさいなんて。
私も未来を……あなたが『叩かれる』っていう未来を変えてしまった。
でもこれだけは叩かれて痛そうだと思って、どうしても変えたかったんだ……許して欲しい。
私は神崎さんに微笑んでずっと頬に当てていた手を外した。
「……え、腫れて、ない?」
烏間先生がこちらへ近付いてきた。
「東尾さんが開発……した技だ。いつか誰かが叩かれる時、絶対に役立つからと」
「え、どうやってやんの? だってさっきモロ叩かれてたじゃんか」
前原くんも興味深そうに言う。
「……条件があるんだ。相手の怒りが長続きしないこと、大きな音を出すこと、誰かを庇うこと。成功するかは分からなかったんだけど……」
ああ、説明しにくいな。
「前原くん、ちょっと思いっきり私の頬をビンタしてみて」
スッと顔を差し出す。
「え、え!? だって痛いじゃんか!!」
「いいから」
私が普通の態度でいることに首をかしげながら前原くんはうねりをつけて私の頬に手を差し出した。
パァン!!!
大きな音が響き、私が吹っ飛ぶ。
「あ、ぁ……い、っつ…ぁああ……」
私は地面に顔を向けて呻く。
「ちょっ……前原何やってんの!!!」
「京香がさっき叩かれた方やったでしょう!!?」
イケメグと岡野さんの声が響く。
私はゆっくりと立ち上がった。
前原くんはようやく理解したらしい。
「片岡、岡野。
俺、今叩いてない」
「はぁ!? 何言ってんの!?」
さっき鷹岡は正常じゃなかったからわかんなかった。
「イケメグ、岡野さん。前原くんが言ってる事は本当だよ。私、叩かれてない」
「だってあんなに飛んで…」
周りのみんなもあまり分かっていないみたいだ。
「とりあえず見せとけ、やっとけ……さっきの鷹岡みたいにね。そういう人から庇いたい時、これをやろうと思ったの」
「だって前原が叩いてないならさっきの音は…」
私は手のひらをパァンと叩いた。
さっきの音と、全く一緒。
「……!!」
「分かった? 2人とも。私は鷹岡から見えない位置で手を叩いただけだよ」
「え、じゃあさっきのは……」