第21章 鷹岡襲来の巻
「うん、叩かれてない」
前原くんは誤解がとけた、とため息をついた。
「吹っ飛んだのは演技。痛がったら鷹岡は気にしないかなと思って。相手が痛がったっていう『結果』が大事だからね。
呻いたのも演技だよ。鷹岡の手のスピードと一緒に私は顔を動かした……、ね、これだけなんだ」
皆はほぉ、と納得。
「難しいようにみえて、全然難しくない。今までの複合技術みたいなもんだよ。だから神崎さん、そんなに心配しなくていいんだって」
「き、京香さん……ありがとう!」
神崎さんは嬉しそうに笑った。
そうそう、この笑顔だよ! さっきの鷹岡に向けたみたいないびつな愛想笑いじゃない。華やかな笑顔。
これを見たくて、私は頑張ったんだから!
「烏間先生、どうでした?」
「……うむ、君も本番には物怖じしないタイプのようだな。素晴らしかった」
「ありがとうございます!」
「ところで烏間先生さ」
莉桜が思い出したように言った。
「生徒の努力で体育教師に返り咲けたし…なんか臨時報酬あってもいいんじゃない?」
「そーそー、鷹岡先生そーいうのだけは充実してたよねー」
いきなり厚かましくなる生徒に烏間先生は微笑んだ。
多分、今までのなかで一番柔らかい笑顔。
「…フン、甘い物など俺は知らん。財布は出すから食いたい物を街で言え」
やったーと喜ぶ生徒に感化されて殺せんせーもそわそわ。
「にゅやッ、先生にもその報酬を!!」
「えー、殺せんせーはどうなの?」
「今回はろくな活躍無かったよな〜」
イチャモンつける生徒と同じレベルで争いだす。
「いやいやいや!! 烏間先生に教師のやりがいを知ってもらおうと静観して…」
「放っといて行こ行こ、烏間先生!!」
烏間先生はふっと目元を細め、渚君の肩を叩いた。
……後ろから土下座してついてくる殺せんせーが見えなきゃ最高の青春なんだけどなあ。
私も笑って皆のあとをついていった。