第21章 鷹岡襲来の巻
「そこまで!!」
殺せんせーの声がかかった。
「勝負ありですよね、烏間先生」
そう言って渚君のナイフを取る。
「まったく…本物のナイフを生徒に持たすなど正気の沙汰ではありません。ケガでもしたらどうするんですか」
そう言ってポリポリとナイフを食べる。殺せんせー、危なかったら助けるつもりだったろうに。
「はは…」
渚君は恥ずかしそうに笑った。
そんな渚君に皆が駆け寄る。
「やったじゃんか渚!!」
「ホッとしたよもー!!」
イケメン磯貝くんまで
「大したモンだよ、よくあそこで本気でナイフ振れたよな」
とべた褒め。
「いや…烏間先生に言われた通りやっただけで。鷹岡先生強いから…本気で振らなきゃ驚かす事すらできないかなって」
そういう渚君に前原くんが無言でパチーンと叩く。
「いたっ…何で叩くの前原君!?」
「あ、悪い…ちょっと信じられなくてさ。でもサンキュな渚!! 今の暗殺スカッとしたわ!!」
前原くんは嬉しそうに渚君の肩を掴んだ。
「笑顔でナイフ突きつけて『捕まえた』とか…渚クンは見かけによらず肉食獣だねぇ」
莉桜がからかいにいくと
「違…上手くいって安心しただけだって!!」
といつも通り反論。
……弱そうなのが、才能か…。
少し遠目で渚君を眺めていると、鷹岡が殺せんせーでいうど怒りの状態で渚君の後ろにたった。
「このガキ…父親も同然の俺に刃向かって、まぐれの勝ちがそんなに嬉しいか、もう1回だ!! 今度は絶対油断しねぇ。心も体も全部残らずへし折ってやる」
血管はピクピクと浮かび上がり、目は血走っている。
そんな鷹岡に渚君は言い切った。
「…確かに、次やったら絶対に僕が負けます。
…でもはっきりしたのは、鷹岡先生。
僕等の『担任』は殺せんせーで、僕等の『教官』は烏間先生です。これは絶対に譲れません。
父親を押しつける鷹岡先生より、プロに徹する烏間先生の方が僕はあったかく感じます」
そしてぺこりと頭を下げる。
「本気で僕等を強くしようとしてくれたのは感謝してます。でもごめんなさい、出て行って下さい」
みんなもうんうんと頷いて、渚君を頼もしそうに見た。
横の方で微かに
「じゃ私はあんたらのなんなのよ」
「僕等のビッチです」
というやり取りが聞こえるのがなんとも……。