第21章 鷹岡襲来の巻
「おまえの目も曇ったなァ烏間。よりによってそんなチビを選ぶとは」
……渚君に怒られるぞ…チビなんていったら。
渚君と烏間先生は何かボソボソと話し合っていてこちらには聞こえない。
鷹岡がバッグを移動させ、軽く手をふった。
「おい…渚のナイフが当たると思うか?」
「…無理だよ。烏間先生と訓練してりゃ嫌でもわかる。増して…本物のナイフなんて使えるはずが」
横でその会話を聞いていた茅野ちゃんは表情を強ばらせた。
私を心配そうに見ていた神崎さんも、渚君に視線を吸い寄せられるように釘付けだ。
「さぁ来い!!」
頭の中でカーンと小気味よい音が鳴る。
鷹岡との闘いのゴングが鳴った気がした。
数秒だけ……数秒だけ。シーンとした。
渚君は鷹岡にジリジリとにじり寄り……ナイフを見つめ、瞳を閉じた。
そして。
渚君は普通に歩いた。
いつも通り、ちょっと寂しげに微笑みながら。
鷹岡は渚君の意図に気付かず、呆然。
目の前にいる鷹岡に向かって歩けば、ぶつかる。
渚君の胸はあっさりと鷹岡の腕に当たった。
暗殺者は、油断を見逃さない。
鷹岡の喉に向かって思い切りナイフを振った渚君に対して、鷹岡はかなり遅れて気がついた。
ナイフを避けようとして頭が後ろへ。鷹岡はバランスを崩した。
そのまま転びそうだった所に、渚君が背中の服を掴んで自分の思いのままの方向に鷹岡の体を落とした。
そこから流れるように後ろへ回り……。
渚君の白い左手は、鷹岡の目を覆い。
ナイフは鷹岡の喉仏へピタリと沿っている。
「あッ…が…」
「捕まえた」
苦しげに呻く鷹岡に渚君はそう言って笑った。
皆は……目を見開いた。
ただ1人、殺せんせーだけが笑っている。
異様な空気に渚君は気がついた。
「あれ、ひょっとして烏間先生。ミネ打ちじゃダメなんでしたっけ」
そして、きょとんとしながら言った。
……違うよ渚君。思わず私もつられて笑う。
私達が驚いているのは、君のその能力、才能にだよ。
この教室でしか生かせない。暗殺の才能に。