第21章 鷹岡襲来の巻
烏間先生は鷹岡から投げられたナイフを地面から抜き取った。
1度は迷う素振りを見せたが、その後は迷わずに向かってゆく。
渚君の、元へ。
「渚君、やる気はあるか?」
「…!?」
皆、驚くのも無理はない。
私も知らなかったら驚いていた。
まだこの時期は実力が分からなかった。
でも、烏間先生は見抜いてたんだな……。
「選ばなくてはならないなら恐らく君だが、返事の前に俺の考え方を聞いて欲しい。地球を救う暗殺任務を依頼した側として…俺は君達とはプロ同士だと思っている。
プロとして、君達に払うべき最低限の報酬は、当たり前の中学生活を保障する事だと思っている。
だから、このナイフは無理に受け取る必要は無い。その時は俺が鷹岡に頼んで…『報酬』を維持してもらうよう努力する」
プロとして……か。
「ククク、烏間。土下座でもすりゃ考えてやるがね」
それに水を差すアホ(鷹岡)。
渚君と烏間先生はじっと見つめあった。
渚君の瞳は揺れ動いたが、烏間先生の目は揺るぐことは無い。
『君を信用している』の意だ。
渚君は自分の前にぶら下がっているナイフをサッと受け取った。
受け取られた烏間先生側は驚いてるけど、渚君の覚悟はとっくに決まったようだ。
「やります」
ナイフを口に加え、腕を伸ばす渚君に、鷹岡は意地悪く笑った。
「おやおや…」
一陣の風が吹く。
爽やかで、軽やかで、でも重い風が。
それはまるで、この試合とも言える暗殺の結果を示しているようで、私は隠れてにっこり笑った。