第21章 鷹岡襲来の巻
私も急ブレーキをかける。
……そうだ、ここは烏間先生が頼ってくれるんだった。
「それ以上…生徒達に手荒くするな。暴れないなら、俺が相手を務めてやる」
「烏間先生!!」
鷹岡は悔しそうに口を噛み締めたあと、ニヤリと笑った。
「言ったろ烏間? これは暴力じゃない。教育なんだ。暴力でおまえとやり合う気は無い。
やるならあくまで教師としてだ」
お前今まで教師じゃねえような事ばっかしてただろ!! とツッコミを入れたくなる。
「おまえらもまだ俺を認めてないだろう。父ちゃんもこのままじゃ不本意だ」
そういって胸元から対先生ナイフを取り出す。
もちろん柔らかい。
「そこでこうしよう!! こいつで決めるんだ!!」
「…ナイフ?」
愛美ちゃんが不思議そうに言った。
「烏間、おまえが育てたこいつらの中でイチオシの生徒をひとり選べ。
そいつが俺と闘い一度でもナイフを当てられたら…おまえの教育は俺より優れていたのだと認めよう。
その時はおまえに訓練を全部任せて出てってやる!! 男に二言は無い!!」
皆の顔がパアッと明るくなる。
今さっき、烏間先生でも止められた。烏間先生にナイフを当てられる生徒だって数人いる。これなら……と思える。
「ただしもちろん、俺が勝てばその後一切口出しはさせないし…
使うナイフはこれじゃない」
そう言っていつも使っているナイフを下に置く鷹岡。
バッグから取り出したのは……
本物のナイフだ。
「殺す相手がオレなんだ。使う刃物も本物じゃなくちゃなァ」
太陽にギラリと反射し、重厚感のあるフォルムを露わにしている。
「よせ!! 彼等は人間を殺す訓練も用意もしていない!! 本物も持っても体がすくんで刺せやしないぞ」
烏間先生はかなり焦って鷹岡に訴えたが、聞く耳を持たない。
「安心しな、寸止めでも当たった事にしてやるよ。俺は素手だしこれ以上無いハンデだろ」
皆の顔が青ざめる。
人を殺す……そんな覚悟を今すぐなんて誰にも出来ない。
「さぁ烏間!! ひとり選べよ!! 嫌なら無条件で俺に服従だ!!
生徒を見捨てるか生贄として差し出すか!! どっちみち酷い教師だなおまえは!! はっははー!!」
「………………!!」
皆が烏間先生を見つめる。
選ばれる事が怖いのかもしれない。
……烏間先生…。