第21章 鷹岡襲来の巻
「やめろ鷹岡!」
烏間先生の声が聞こえた。
「大丈夫か? 首の筋に痛みは無いか……」
私の背中を支えた烏間先生の言葉がふ、と止まった。
……作戦、成功です。私は親指を小さく立てる。
烏間先生は目を見開いたが、鷹岡に不審がられないようにすぐ前原くんに声をかけた。
「前原君は?」
「へ……へーきっス」
前原くんは普通に言ったがお腹を押さえている……痛そうだ。
「京香さん、大丈夫?! ごめんなさい、私のせいで……」
神崎さんは半泣きだ。
「……大丈夫だよ」
私は叩かれた側の頬を押さえた。
『鷹岡から見えないように』。
「全然、痛くないもんね!」
だってそれは事実。
また後で皆に説明しないと……と思っていると、背後で鷹岡が烏間先生に言い放った。
「ちゃんと手加減してるさ、烏間。大事な俺の家族だ。当然だろ」
「いいや」
怒りビキビキで鷹岡に声をかけたのは……殺せんせーだ。
「あなたの家族じゃない。私の生徒です」
「殺せんせー!」
みんなも嬉しそうだ。
「フン、文句があるのかモンスター。体育は教科担任の俺に一任されているはずだ。そして、今の『罰』も立派に教育の範囲内だ」
体罰です!!!……とは言わない。
「短時間でおまえを殺す暗殺者を育てるんだぜ。厳しくなるのは常識だろう。それとも何か? 多少教育論が違うだけで…おまえに危害も加えてない男を攻撃するのか?」
完全論破だ。
でも違う、鷹岡の意見は合ってるけど違う。
……なんて言ったらいいんだろう。ここで何も出てこないのは私が子どもだからなのかな。難しい。もどかしい……。
結局誰も何も言えず、鷹岡の訓練は続いた。
たまに誰かが胸ぐらを掴まれて、その度に何も言えない自分に腹が立つ……そんな感じ。
叩かれない限りは私は庇えない。
次第にクラスにも疲労の色が濃くなる。
「じょっ…冗談じゃねぇ…」
「初回からスクワット300回とか…死んじまうよ…」
「烏間先生〜…」
倉橋さんの言葉を目ざとく聞いた鷹岡は、倉橋さんの元へ向かった。
「おい、烏間は俺達家族の一員じゃないぞ」
倉橋さん……!
私は今度は倉橋さんの元へ駆け出した。
「おしおきだなぁ…父ちゃんだけを頼ろうとしない子は」
しかし、倉橋さんを殴ろうとした手は烏間先生によって止められた。