第21章 鷹岡襲来の巻
次の日の体育。
「…よーし、みんな集まったな! では今日から新しい体育を始めよう! ちょっと厳しくなると思うが…終わったらまたウマいモン食わしてやるからな!」
昨日のように、明るい。
「そんな事言って自分が食いたいだけじゃないの?」
「まーな、おかげでこの横幅だ」
クスクスとクラスから笑い声が漏れる。
「あと気合い入れのかけ声も決めようぜ、俺が『1.2.3』と言ったらおまえら皆でピース作って『ビクトリー!!』だ」
「うわ、パクリだし古いぞそれ」
「やかましい!! パクリじゃなくてオマージュだ!!」
完璧に心を掴んでいる。砕けた空気。
……そこが、怖い。
「さて! 訓練内容の一新に伴ってE組の時間割も変更になった。これを皆に回してくれ」
「……? 時間割?」
回ってきたプリントは、なかなか理解に苦しんだ。
新しい時間割は訓練がほとんどを占めている。
今まではなかった土曜日の訓練も、だ。
私は自主トレを土曜日もしてるけど、鷹岡のよりは辛くない。
……軍隊じゃ、ないんだから。私達は。
「……うそ…でしょ?」
「10時間目…」
「夜9時まで…訓練…?」
皆の鷹岡への目がうっすらと、ゆっくりと変わってゆく。
「このぐらいは当然さ。理事長にも話して承諾してもらった。『地球の危機ならしょうがない』と言ってたぜ。この時間割についてこれればおまえらの能力は飛躍的に上がる。では早速…」
何事も無いように話を続ける鷹岡を止めたのは前原くんだった。
「ちょっ…待ってくれよ無理だぜこんなの!!」
「ん?」
「勉強の時間これだけじゃ成績落ちるよ! 理事長もわかってて承諾してんだ!! 遊ぶ時間もねーし!! できるわけねーよこんなの!!」
しかしその言葉は途中で途切れた。
鷹岡は容赦なく前原くんの頭を掴み、思い切り腹を蹴った。
苦しそうに息を吐き出す前原くん。
……間に合わなかった……!
私は拳を握りしめた。
「『できない』じゃない。『やる』んだよ」
そのまま地面に前原くんを投げる。
「言ったろ? 俺達は『家族』で俺は『父親』だ。
世の中に…父親の命令を聞かない家族がどこにいる?」
……ここにいますと言いたい…。
実の父親にだって反抗するのにこんな奴に逆らわないとかないでしょ!!!