第21章 鷹岡襲来の巻
スイーツを食べながら皆は座り込んだ。
「明日から体育の授業は鷹岡先生が?」
「ああ!」
快活に笑う鷹岡……先生を付ける気になれない……は烏間先生を親指で指さして言った。
「烏間の負担を減らすための分業さ、あいつには事務作業に専念してもらう、なっ!!」
烏間先生は黙ったままだが、その目には警戒が滲んでいる。
「大丈夫! さっきも言ったが俺達は家族だ!! 父親の俺を全部信じて任せてくれ!!」
その言葉を聞いて、烏間先生はふいっと後ろを向いてしまった。
そのまま殺せんせーの方へ行く。
「あ、待って……!」
後ろでサッカーをしだした皆を背に、私は烏間先生に近寄った。
「? どうした。訓練はしないのか?」
「……いえ、します。ですが……」
こんな言葉言うのは、間違っているのかもしれない。
でも……。
「先生、『あの技』使います。だから、もし皆が怪我したら助けてください。お願いします」
烏間先生はすぐにピンときたようだ。
フリーランニングの後、たった数回だけどやったあの『技』。
「……分かった」
条件その1。相手の怒りが長続きしない時。
その2。派手な音を立てて誤魔化したい時。
その3。……誰かを、かばう時。
今回は全て合っている。
普段殺せんせーのスピードに慣れている私なら、きっとできる。
私は深く深呼吸をした。
サッカーの輪に入り、今日の授業は終わりだった。
「どう思う?」
授業が終わり、千葉くんが全員に問いかけるように言った。
「えー、私は烏間先生の方がいいなー」
と言ったのは倉橋さん。
「でもよ、実際のとこ烏間先生何考えてるかわかんないとこあるよな」
そう続けたのは岡島くんだ。
「いつも厳しい顔してるし、メシとか軽い遊びも…誘えばたまに付き合ってくれる程度で。その点あの鷹岡先生って根っからフレンドリーじゃん。案外ずっと楽しい訓練かもよ」
みんなもうんうんと頷くが、私はそっぽを向いた。
……確かに、接してみても分からなかった。鷹岡の狂気。
……知ったからこそ言える、分かること。
あの人とは関わりたくない。皆にも早くわかって欲しい。
明日が待ち遠しいけど、来て欲しくない。
そんなぼんやりした感情のまま1日が過ぎていった。