第21章 鷹岡襲来の巻
そこに殺せんせー登場。
「そんな事ありません。確かにあの人は…先生の暗殺のために送りこまれた工作員ですが。
彼にもちゃんと素晴らしい教師の血が流れていますよ」
……うん、そうだよね。
じゃないとこんな教室すぐに嫌になっちゃうだろうし……。
それに、烏間先生の優しさを感じるのは『これから』だし、ね。
ふと、校舎の向こう側に目をやった。
……誰か、歩いてくる。
「…? 誰だあの人?」
「でけぇ〜…」
正味180はあるだろうか。
近づいてきた大男は、大荷物を抱えてニコッと笑った。
「やっ! 俺の名前は鷹岡明!! 今日から烏間を補佐してここで働く! よろしくな、E組の皆!」
ドサリと置かれた大荷物の正体はたくさんのスイーツだ。
「…な、なんだ。ケーキと飲みモンだ」
私は無意識に鷹岡から距離を置いた。
……この人は、下手したらシロより危険だ。殺せんせーにとってではなく、『私達』にとって。
「!! これ『ラ・ヘルメス』のエクレアじゃん!!」
「こっちは『モンチチ』のロールケーキ!!」
「いいんですか、こんな高いの?」
生徒の歓喜と戸惑いの声に高岡は元気に笑った。
「おう、食え食え! 俺の財布を食うつもりで遠慮なくな!!」
そしてドスッと座り込む。
「モノで釣ってるなんて思わないでくれよ。おまえらと早く仲良くなりたいんだ」
エクレアらしきものを取り出し、美味しそうに食べる。
「それには…皆で囲んでメシ食うのが一番だろ!」
明るい新任先生に、皆の空気が和らぐ。
「でも…えーと鷹岡先生。よくこんな甘い物ブランド知ってますね」
「ま、ぶっちゃけラブなんだ砂糖がよ」
「でかい図体してかわいいな」
高級スイーツを食べたそうに見つめる殺せんせーにも気軽に話しかける。
「っ……」
「お〜〜殺せんせーも食え食え!! まぁいずれ殺すけどなはっはっは」
芝生にひかれたケーキや飲み物を興味深げに皆見つめる。
「同僚なのに烏間先生とずいぶん違うスね」
「なんか近所の父ちゃんみたいですよ」
「ははは、いいじゃねーか父ちゃんで」
鷹岡は手近にいた生徒を小脇に抱えた。
「同じ教室にいるからには…俺達家族みたいなもんだろ?」
……鳥肌が立ちそうだ、この後の事を知ると。
私は腕をぎゅっと握りしめた。