第21章 鷹岡襲来の巻
寺坂竜馬、吉田大成、村松拓也の悪ガキ3人組。こちらは未だに訓練に対して積極性を欠く。3人とも体格は良いだけに…彼等が本気を出せば大きな戦力になるのだが。
全体を見れば、生徒達の暗殺能力は格段に向上している。この他には目立った生徒はいないものの…
そこまできて俺は再度思考を止めた。
先ほどのターゲットの言葉ではない。
蛇がぬるりと首に巻き付く、そんな得体の知れない気配。
背後から感じたその気配に、俺は思わず全力で防いだ。
飛んでいったのは……
潮田渚君だ。
「…いった…」
と頭を抱えている。
「…!! すまん、ちょっと強く防ぎすぎた。立てるか?」
「あ、へ、へーきです」
杉野君に「バッカでー、ちゃんと見てないからだ」と茶化されながら、彼は苦笑いした。
…潮田渚。小柄ゆえに多少はすばしこいが、それ以外に特筆すべき身体能力は無い、温和な生徒。
…気のせいか? 今感じた、得体の知れない気配は……。
―――――――――
「それまで! 今日の体育は終了!!」
烏間先生の声がかかる。
「いやー、しかし当たらん!」
「スキ無さすぎだぜ烏間先生!」
そんなクラスメイトのセリフを耳に流しながら私は腕の土埃をパンパンと払った。
「京香、何回当たった?」
莉桜がにっこり笑ってこちらに言う。
「んーと、2回……かな。すごい節々痛い……」
「結構当たってるじゃん! いーなー」
たわいもない話をしていると、倉橋さんが烏間先生に声をかけた。
「せんせー! 放課後街で皆でお茶してこーよ!!」
しかしその誘いを一蹴。
「…ああ、誘いは嬉しいが、この後は防衛省からの連絡待ちでな」
そして校舎の方へと去る。
「……私生活でもスキがねーな」
「…っていうより…私達との間にカベっていうか、一定の距離を保ってるような」
……あ。
このセリフは。
……って考えるのも癖になってる。
鷹岡の回、だ。
……ずっと、『あのシーン』だけは、納得いかなくて、守りたくて、訓練重ねたんだけど…どうなるかな。
「厳しいけど優しくて、私達のこと大切にしてくれてるけど。でもそれってやっぱり…ただ任務だからに過ぎないのかな」
……まあ、そう思われても仕方ないのかな……。