第20章 アートは立体かペイントか。
数分後、イリーナ先生の左腕にはなんともキレイな柄が浮かんでいた。
「おお〜さすが菅谷!」
「そもそもファッションアートだしな、外に出て楽しい感じに仕上げてやったぜ」
菅谷君のセリフのように、見ているだけでウキウキするような模様だ。
「これなら逆にビッチ先生も喜ぶんじゃない?」
「ねー」
矢田さんと倉橋さんの言葉は奇しくも杞憂に終わる事となる。
「ヌルフフフ、先生も負けてはいませんよ。右側を見てごらんなさい」
皆がその言葉につられて右腕を見ると……。
そこには四コマ漫画があった。
いや、本当言葉通り。
「いやぁ…アートとかファッションは苦手なので得意な分野で」
「逃げに走るくらいなら描くな!!」
弱点⑳、安い絵しか描けない。
なんともアンバランス……。
「ホラァ…右と左で違和感ありすぎ」
「ビッチ先生もう外歩けねーぞ」
これどうする? という感じで皆が目を合わせる。
「いや…あえて漫画をポップアート的な図柄として活かす手もあるぜ。枠の周囲をいじって…」
そういって菅谷君がチマチマ描くと、マンガの枠にはキレイな柄が出来た。
花にも蛇にも見える。それとも何か違うものかな……。
とにかく綺麗。
……と、せっかく綺麗に収まってたのに……。
「いや…あまりキレイに収まりすぎるも気障ったらしい。どこか一ヶ所は笑いを取らなくては」
殺せんせーがそう言ってまた書き出す。
「なんでそこで張り合うの?」
皆が苦笑いでツッコんでいる間にイリーナ先生の顔に落書き(作品?)が出来ていた。
丸メガネに、ヒゲ。中肉中背とおでこに書いてある。
「それ見た事か!!」
2人の合戦はまだ終わらない。
「いや…ヒゲはまだしも丸メガネが野暮ったい。フレームをデザインして…」
「いや…むしろこの塗料描きづらいです。マジックと段ボールで…」
ああああああああああああああ!!と叫びたくなる。
これじゃあ怒るよ……。
「……収拾つかなくなってきたな」
「どうすんだ? 一週間は落ちねーんだろ、これ」
おしゃれな部分とアホな部分の差がとてつもなく激しい。
気付けばカブトを被らされてるし足にも絵は及んでるしその絵は一部一部ふざけてるし。
「一応落とせない事ぁ無いけど。めんどいな」
菅谷君は面倒そうに頬をかいた。