第20章 アートは立体かペイントか。
「私の色香に悲鳴を上げろオス達よ! おはよギャーッ!!」
……前半の言葉は聞かなかったことにしよう……。
「なっ、何皆でバケモノメイクやってんのよアンタら!!」
「あー…みんな見てるうちに描いて欲しくなったみたいで」
菅谷君が困った顔で言うも、
「しばらくして塗料をはがすと色素が定着してるんですって。楽しみで授業が手につきません」
と殺せんせーがカバー。
「おまえはそれでも担任か!!」
総ツッコミが入った所で殺せんせーは切り出した。
「ところで菅谷君。見てたら先生も誰かに描いてみたくなってきました」
うずうずしているが、周りを見渡しても皆描いてもらってて描くところがない。
「いいけど…皆に描いちゃったから…もうまっ白なキャンバスのこってないぜ」
そこで2人は気付いた。
目の前に腕やら足やら胸やらを露出しているイリーナ先生がいることに。
「あるじゃないですか…好き放題描けそうな面積の広いキャンバスが」
「ちょ…ふざけんじゃないわよ! 誰がそんな…」
抵抗するイリーナ先生は自分の足の下にある(先程まで使っていた)ペンに気付かなかった。
そのままズルッと転ぶ。
ただ運悪く後ろには壁。
「グヘッ」
思い切り頭をぶつけて気絶した。
「勝手に気絶しちゃったぞ、ビッチ先生」
「とりあえず安静にしておきましょう」
安静、とはつまりまぁ。
「安静にしている間に…先生はこっち半分、菅谷君はそっち半分を」
「ほっほー、俺と競う気かね」
とりあえず置いとくの意であって。
「すごいですね菅谷君。いつもの教室があっという間に彼色に染まっちゃった」
「うん…」
皆自分に描かれた絵を自慢げに見せ合う。
「芸術肌なだけにさっきみたいに目立ちすぎちゃう時があってさ。2年の時にそれが原因で素行不良扱いされたんだって」
どうやらそう説明する渚君も詳しくは知らないらしい。
「…ま、正しいけどね」
菅谷君はそういって楽しそうにイリーナ先生の腕に絵を描き続けた。
「……でも、そうやって才能を活かせるっていいね」
「そうですね!」
こんなにすごい絵をかけるなら将来食っていけそうだけど……。