第20章 アートは立体かペイントか。
「ま…まぁ、ひょっとしたら気に入るかもしれませんし…」
そのタイミングでイリーナ先生が気絶から目覚めた。
「あ、起きた」
椅子から背中を離し、自分の手を見つめる。
「自分の現状を確認してるな」
そして扉を開けて廊下に出ていった。
「出てった、意外と気に入ったか?」
……私はこの先に起こることを予測してそっと校庭側の窓へ寄った。
前原君がそっと廊下を覗く。
イリーナ先生が戻ってきた。
とんでもなくデカイ銃をもって。(しかも2丁)
弾入れを肩から2本もぶら下げている。
「激しくお気に召さなかった!!」
「あの銃本物だぞ!!」
そしてそのまま教室に入ってきて間髪あけず撃ち始めた。
「死ね!! あんた達皆殺しにしてやるわ!!」
「ごっ…ごめんなさい、つい熱中してしまって…でも教室壊れるから実弾はやめて!!」
殺せんせーに実弾が効かないのも忘れてイリーナ先生は鬼のように撃っている。
杉野くんがそれを見かねてイリーナ先生を止めに入った。
「やめろってビッチ先生!! すぐ落とせば定着しないらしいぜ!!」
「キーッ!! せっかくの夏服デビューが台無しよ!!」
落書きまみれの体でイリーナ先生は暴れた。
「菅谷君が全部やればあそこまで怒らなかったのにね。殺せんせーが余計なモノ足すから…」
「…だろーな」
渚君と菅谷くんの会話をそれとなく聞いた。
「普通はさ、答案の裏に落書きしたらスルーされるか怒られるだろ? だけどあのタコは安っぽい絵を加筆して来る。むしろ喜々としてさ」
殺せんせーは銃を撃たれながらも(体内で溶かしているため)涼しげな表情でイリーナ先生にpookyを薦めている。
「考えみりゃ当然だよな。落書き程度でマイナス評価になるわけがない。なんせ殺しに行ってもいいんだから」
烏間先生が騒ぎを聞きつけて教室にやってきた。
その顔はイリーナ先生の顔よりも鬼だ。
「ちょっとぐらい異端な奴でもここじゃ普通だ。いいもんだな、殺すって」
「…うん」
外から蝉の声が聞こえる。
殺せんせーの暗殺期限まで残り8ヶ月。
……私がここに来てから、もう3ヶ月近い。
…不思議な縁だな…。
目の前で動く触手を、私は見つめた。