第20章 アートは立体かペイントか。
殺せんせーが描いてもらっているのを見てうずうずしだす周り何人か。
「な、なぁ菅谷。俺にも描いてくんね?」
「あ、私も〜!」
そして始まるアート大会。
皆が順番に描いてもらっているのを私は眺めた。
「こうやって見てみるとけっこう平面的なんだね〜」
「京香さんメヘンディアート知ってたんですか?」
「……まあ、少しだけ? こんなもんだよっていうのだけ」
何せマンガで見てましたから!!
「東尾も美術得意だったよな」
ふと菅谷君がこちらを振りかえって言った。
「うーん、好きだけど私は絵画の方とか……抽象的なの出来ないんだよねえ、写実的? っていうのかな」
だから今回は菅谷君に描いてもらいたいな、と続けると、菅谷君は嬉しそうに笑った。
腕、足……うーん、どれがいいかな。
でもあんまり目立って理事長に目つけられてもなあ……。
「……あ、背中」
背中なら目立たなくていいかな。
ひとしきり周りに描いて満足げな菅谷君に、私は言った。
「菅谷君、背中に描いてくれない?」
「え、背中? いやまあいいけど……」
菅谷君はどこかもどかしげだ。
「京香、馬鹿なの!?」
突然割って入る茅野ちゃん。
「えっ、えっ?」
「背中だったら……下着見えちゃうでしょ。」
後半小声で言った茅野ちゃんに、私は、あ、となった。
「そっか、そうだった!」
「も〜、京香ってしっかり見えてたまーに抜けてるよね」
「うーん、じゃあ腕の上の方に描いてくれるかな。いざとなったら隠れるように」
「オッケー」
椅子に座り、菅谷君が描くのをまたぼーっと眺める。
「……ふふ、くすぐったい」
「くすぐったがりの人は結構悶絶するぜ、これ」
繊細な手付きで模様が浮かび上がってくる。
「…綺麗」
出来た模様は私には描けない抽象的なもの。
花にもナイフにもハートにも見える。
「すごいねえ。……ってあ! 愛美ちゃんとちょっとお揃いだ! 茅野ちゃんとも!!」
「全員のごちゃ混ぜにしてみた。東尾の好きなものよく知らないしな」
「ありがとう、菅谷君!」
皆がキャッキャ和気あいあいしていると、そこにイリーナ先生が入ってきた。