第19章 球技大会は女のバトル。
『野球部バント地獄のお返しだ!! 同じ小技なら野球部の方がはるか上!!』
確かにE組と同じ位上手い。
守備も完璧だ。
『そしてE組守備のほうはザル以下!! 楽々セーフ!! E組よ、バントとはこうやるんだ!!』
……これが、理事長の戦略。
私は目を細めて理事長を見つめた。
本来バントは簡単な打ち方で、回さなくても打てるから初心者向け。
野球部が素人のE組にバントはほぼタブー……だけど、さっきE組がやった事によってOK扱い。
『あっという間にノーアウト満塁だー!! 一回表のE組と全く同じ!!
最大の違いは!!
ここで迎えるバッターは…我が校が誇るスーパースター進藤君だ!!』
理事長の洗脳を受けてやる気万全の進藤君。
こう見るとすげぇ怖い……。
『もとは同じ野球部で競い合った2人!! しかし杉野はE組に落ち、部活も追放!! ここでも待つ運命はやはり負けかァ!!』
……あの放送部員殴りたい…。
「ちょ、京香、拳握らないで!!」
私が睨む先に気付いたのか慌てる莉桜。
「うん…いやでも殴りた」
「ダメだってば!!」
莉桜は私の言葉を遮り半笑いで止めた。
「むー…じゃあ仕方ないか」
「そ、れ、よ、り、も! 男子共の結果、ちゃんと見届けないとさ!!」
莉桜の言葉に免じて私は拳を開いた。
一方グラウンドは妙なざわつき。
『!! こっ…この前進守備は!!』
そう、先程の野球部の守備とほぼ同じ……。
理事長とカルマ君が何か言葉をやりとりしている。
……さっきカルマ君がクレームをしたのは、この為だ。
野球の守備は、打者の集中力を乱す場所ではいけない。
でもさっき野球部がやった事により、前例が出来た。
殺せんせーの頭脳も理事長に負けない。
理事長の言葉が途切れた。
2人の会話が終わると、磯貝君とカルマ君はさらに打席に近づいた。
『ちっ…近い!
前進どころかゼロ距離守備!!
振れば確実にバットが当たる位置で守ってます!!』
進藤君がぽかんとした顔になるのがこちらからでも伺えた。
……まあ、この距離じゃどんなに集中してても冷めるだろう…可哀想に。