第18章 もう1人の転校生、堀部イトナ
「こ、殺せんせー…と、皆……」
川の方へ柵を乗り越えていた右手は殺せんせーが、道路に面していた左手は茅野ちゃんが。
茅野ちゃんの後ろには渚君、愛美ちゃん、カルマ君、そして何故か(?)前原くんと磯貝くんもいた。
「……これはこれは、浅野理事長」
殺せんせーがいつもの笑顔(変装済み)で笑った。
理事長は無表情のあと、いつもの乾いた笑顔をその面に浮かべた。
「…いい担任を持ってるね、東尾さん。あとは、いい友人も」
皆がキッと理事長を睨む。
中間テストの恨みをしっかり覚えていたようだ。
「では」
車の窓が閉まり、理事長は学校の方へ去っていった。
「……」
気まずい間。
「……あの、さ」
先に切り出したのは茅野ちゃんからだった。
「京香のこと、何も聞かないよ」
「……え?」
「家族の写真見せてくれた京香、本当に嬉しそうだったもん」
茅野ちゃん……。
「だから、ほんと〜〜〜うに困った時は言ってね。そしたら皆で助けるから!」
優しい笑顔でこちらを見つめる茅野ちゃん。
「あ、あの! 何の役にも立たないかもしれませんけど! ちゃんと……ちゃんと、友達ですから!」
愛美ちゃんも笑って言ってくれた。
「……うん、ありがとう2人とも」
「だからさぁ、ちゃんと学校来た方がい〜んじゃないの?」
カルマ君も半分茶化すように言う。
「隣の人がサボりとかやなんだけど〜」
「ちょっとカルマ君、人のこと言えないよね」
渚君は半笑いでカルマ君を問い詰めた。
「皆、待ってるぞ」
意外な言葉をかけてくれたのは前原くん。
それ以上は何も言わないが、顔が赤くなってる所を見ると青春ぽくて恥ずかしいのだろう。
私は静かに微笑んだ。
「前原の言う通りだって! 俺ら待ってるぞ! あんな面白い教室に来ないのなんかさ、つまんないじゃん!」
磯貝くんも励ますように言ってくれた。
右手を掴んでいた殺せんせーはゆっくり離して、丸い正露丸みたいな目で私の目を覗き込んだ。