第18章 もう1人の転校生、堀部イトナ
次の日。
私はゆっくりと瞼を開けた。
「……学校!!」
ガバッと布団を飛ばしたが……ふいに事実に気付いて私はベッドから降りた。
……休みに、したんだった。
目元が重い。
私は数少ない普段着に着替えた。
……今日は、何しよう。
そういえばこの街をゆっくり見たことが無かった気がする。
殺せんせーが愛して、雪村先生が愛したこの街、椚ヶ丘。
「……行こう」
足を止めずに、歩を進める。
そしたら、きっと気が紛れる。
私は玄関を開けた。
────
「ジメジメしてるな……」
とても爽やかとは言い難い風。
じっとりと肌に吸い付く。
流石に中学生はもう周りにはいない。
そうだろう、きっと今は授業中だから。
私はぼんやりと街を散策した。
今までまともに見なかったお店、景色、観光名所。
「2ヶ月も経つのに、何も見てなかったんだな……」
たくさんの人と、物と……。
「……あれ、またこの川…」
結構な距離を歩いたが、先ほどと同じ川にまたぶつかった。
どうやら随分長い川らしい。
さっきは横から見てただけだけど、今回はしっかり橋も架かっている。
「……綺麗…」
都会の割には澄んだ川だ。
ぼうっと眺めると、魚やカモが泳いでいるのが見える。
鳥も軽々と頭上を飛んでいく。
……あんな風に飛べたらいいのに…。
視線を上から下へと戻し、私はまた水が流れるのを見つめた。
……ここから、下に降りたらどうなるんだろう。
川は浅い。でもここから10m位はあるかな。
…きっと、飛べたら。
私が頑張って、飛べたら、元の世界に戻れればいいのに……
私は無意識に橋の柵へと手をかけた。