第18章 もう1人の転校生、堀部イトナ
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俺はスマホの電源を切った。
イリーナから聞いた様子だとまだ泣いているらしい。
「まだ訓練は続くぞ」
俺は全員に声をかけた。
堀部イトナを見たE組は、訓練をしたがった。
誰の手でもなく、自分の手で殺したいと。
……いい目だ。
それを活かすにはいい技術が必要だ。
そう考えた俺は今まで導入しなかった厳しい訓練を導入した。
今のところギリギリついてこれてるくらいか……。
「あの、烏間先生」
「どうした、茅野さん」
「……京香、大丈夫ですか」
どうやら電話の内容を聞いたらしい。
先ほどの『国家機密』発言で一応は収まったが、やはり気になるらしい。
こちらをチラチラ見るのが分かる。
俺はため息を一つついた。
……あまり説明するのもどうかと思ったんだがな。
「……一旦訓練を中止に」
あまり大きな声ではなかったが、すぐに集合した。
……よく聞いてるな。
一通り座ったところで、俺は話し始めた。
「皆も気になっていると思う、東尾さんの件だが」
「……!!」
空気がぴしっと固まる。
「……彼女は今、諸事情あって家族と暮らしていない。一人暮らしだ。今はイリーナが彼女の部屋にいる」
「……え? それってどういう……」
奥田さんが困り顔でこちらを見る。
「……すまない、細かくは言えない。だが……」
俺は少し迷ったが、話すことにした。
「……その原因があの『シロ』にあるらしい。彼女は望まずして1人で住んでいる」
「それを、さっき知ったって事ですか?」
「…ああ」
核心に触れず話すというのは……難しいな。
「ひどい……」
倉橋さんが口元を押さえる。
「……京香は、今何してるんですか?」
「寝させている。ショックが大きいようだ」
泣いている、とは言わなかったが、どうやら察したらしい。
「……見舞いは遠慮してくれ。まだ東尾さんの許可を得てないからな」
「は、はい……」
「では、訓練開始!!」
訓練を再開したが、集中力の低下は目に見えて分かった。
……早く東尾さんに許可を取らないとな。
俺は静かに頷いた。
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