第18章 もう1人の転校生、堀部イトナ
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……優しい目で、こちらを見つめるお母さん。
『ねぇお母さん!! ねーちゃんが俺のおもちゃ取るんだよ!!』
少しやんちゃな弟。
『あらあら京香、だめじゃない』
『ちがうよぉ! だってそれ、元々私のだもん!』
『こら、それ京香こないだあげてただろう? 高大に』
微笑ましそうにこちらを見るお父さん。
『お父さん!! ……そうだっけ?』
私は頭をかいた。
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「……ん…………」
「起きた? 京香」
イリーナ先生の美しい顔がドアップで見える。
「……夢……?」
「違うわ、ここはアンタの部屋よ。アンタあの後気を失ったのよ」
熱はないわ、とイリーナ先生は言った。
「……涙…」
「……あんた、寝ながらずーっと泣いてたわよ。少しは水飲みなさい」
カタン、とコップが置かれる。
「…………うん…」
イリーナ先生の優しさが身に染みて、また涙が出てくる。
「……じゃあ、あれも夢じゃ……ないんだね」
声が震える。
イリーナ先生は黙ってこちらを見ていた。
……お母さん、みたい。
「シロさんが、教室にきて……、私を、私をこの世界に飛ばしたのは……シロさんだ、って……」
「……カラスマは、今あいつらの訓練してるわ。あの転校生見てやる気が出たみたいね」
イリーナ先生は私の言葉にあまり触れず淡々と話した。
「……私も、訓練……」
布団から上半身を出すと、
「今日は休みなさい。カラスマからの命令よ」
と止められた。
烏間先生からの……。
私はもう1度ベッドに戻った。
「……わかり、ました……」
でも、眠くはない。
私は目を細めて天井を見た。