第18章 もう1人の転校生、堀部イトナ
「残念ながら今はその時期じゃない」
そう言ってシロは後ろを向いた。
「私は触手持ちじゃない、から……あんたを止めるのなんか簡単よ!!」
扉にかけより、肩をつかむ。
だが、その手は簡単に振り払われた。
「っ……」
流石に強い力だ。
「まだ研究途中なんだよ。だから、今は時期じゃない」
そう吐き捨ててシロさんは去っていった。
私は廊下に座り込んだ。
「はっ……はぁっ……うう……」
吐く言葉が無くなった後は、ただひたすら涙しか出ない。
軽く過呼吸だ。
許せない、許さない許さない……!!
私を、私の運命を、変えてまでここに飛ばした、アイツが……!!
「東尾さん、大丈夫か!?」
近くにいた烏間先生が近寄る。
「……は、はい……、大丈夫、です」
深呼吸をして、私は立ち上がった。
「……烏間先生……」
「ああ、君が言わんとする事は分かる。……あいつだったんだな」
「はい……はいっ……!」
きっと、防衛庁の上の人……その人も、きっとあいつだったんだ。
皆が異様な目で見てくるのが分かる。
「き、京香……何があったの? 家族って……こないだ律と一緒に見た人たちだよね? どういう事? 今、会えないの?」
茅野ちゃんもこちらに来て一気に質問する。
「そ、それは……」
思わず視線をそらす。
茅野ちゃんが私の裾を掴もうとしたが、その手は烏間先生によって押さえられた。
「……悪いが、東尾さんについては国家機密だ。あのタコよりも下手したら重い」
「!? ……どういう事ですか!?」
……嘘だよ、国家機密なんかじゃない。
でもこんな事言ったらきっとパニックになってしまう。
もう一つ世界があって、そこではあなた達が物語になってる……なんて。
そんな事言えない、でも帰れる手段はあいつしかない。
そのアイツでさえまだ時期じゃないと断言した。
……私はどうしたらいいんだよ!!!
「…………殺せんせー……」
私は静かな教室に足を踏み入れて殺せんせーを見つめた。
涙が止まらない。
「……私、もう死んじゃいたいです……」
それを最後に、プツリと意識が切れた。