第18章 もう1人の転校生、堀部イトナ
「ガアッ」
獣のように素早く殺せんせーに近づく堀部くん。
しかし、それは途中で止められた。
堀部くんの首元にシロさんが薬を打ったからだ。
白目を剥き、ドサリと落ちる。
「すいませんね殺せんせー。どうもこの子は…まだ登校できる精神状態じゃなかったようだ」
机をどかし、堀部くんを背負うシロさん。
「転校初日で何ですが…しばらく休学させてもらいます」
皆に戸惑いの空気が流れた。
「待ちなさい!担任としてその生徒は放っておけません。一度ここに入ったからには卒業するまで面倒を見ます。
それにシロさん。あなたにも聞きたい事が山ほどある」
少しだけ怖い顔で言う殺せんせーにシロさんは釈然と答えた。
「いやだね、帰るよ。力ずくで止めてみるかい?」
殺せんせーが怒るのが分かった。
ヒュッと触手を伸ばし、ガッと肩をつかむ。
しかし触手がしっかりと肩を掴み続けることはなかった。
「対先生繊維。君は私に触手一本触れられない」
ピッと溶けた触手を床に落とす。
「心配せずともまたすぐに復学させるよ、殺せんせー。3月まで時間は無いからね。
責任もって私が…家庭教師を務めた上でね」
……フー、やっとイトナ君編、終わったな。
私はため息をついて、机に座ろうとしたが。
シロさんがドアの前で止まった。
「あ、そうそう。東尾……京香さん?」
「……は?」
なんで私の名前知ってんの?
皆の注目が私とシロさんに集まるのが分かる。
「え、すみません。私とシロさんって知り合いじゃ……ないですよね」
「うん、でも私は君をよく知っているよ」
……なんで??
私がこの世界に来てからまだ2ヶ月と1週間。
その間会ったのはクラスの皆、殺せんせー、烏間先生にイリーナ先生、あとは理事長……それ以外はほぼ話してない。
「なんで……私を知ってるんですか?」
「それは……」
少しもったいぶった口調でシロさんは笑った。