第18章 もう1人の転校生、堀部イトナ
「無いね。私の性能計算は完璧だから」
シロさんの目が光った。
「殺れ、イトナ」
堀部くんの触手が殺せんせーにめり込む。
床の木材がはね飛んだ。
……しかし。
どろりと溶けた触手は、殺せんせーの方ではなく堀部くんの方の物だった。
驚く堀部くん。
「おやおや、落し物を踏んづけてしまったようですねぇ」
堀部くんの触手の先には、対先生ナイフ。
「え、あ……」
渚君の小声の声が聞こえる。
渚君から掠め取ったナイフを、殺せんせーは床に置いたのだ。
しらーんとした顔をしている殺せんせーは堀部くんを脱皮した皮で包んだ。
「同じ触手なら…対先生ナイフが効くのも同じ。触手を失うと動揺するのも同じです」
破れた皮から手を出すが、抵抗できない様子。
「でもね、先生の方がちょっとだけ老獪です」
そのままブォンと皮を投げ、窓の外へ。
ガラスが粉々に割れ、物凄い音が部屋に響く。
堀部くんは2転3転してからようやく座り込んだ。
「先生の抜け殻で包んだからダメージは無いはずです。
ですが、君の足はリングの外に着いている。
先生の勝ちですねぇ。ルールに照らせば君は死刑。もう二度と先生を殺れませんねぇ」
横縞の模様を浮かべ余裕の笑みを浮かべる殺せんせー。
堀部くんの触手がビキッと動いた。
「生き返りたいのなら、このクラスで皆と一緒に学びなさい。
性能計算ではそう簡単に計れないもの。それは経験の差です。
君より少しだけ長く生き…少しだけ知識が多い。先生が先生になったのはね、それを君達に伝えたいからです。
この教室で先生の経験を盗まなければ…君は私に勝てませんよ」
皆も納得し顔だ。
「勝てない…俺が、弱い…?」
堀部くんの触手が黒へと変わり、目をぎらりと光らせる。
「黒い触手!?」
「やべぇキレてんぞあいつ!!」
触手によって風が巻き上がり、教室に吹き込んだ。
周りの木々も倒される。
バッと強いジャンプ力で窓際に座り、何かブツブツ呟いている。
「俺は強い、この触手で、誰よりも強くなった、誰よりも」
最早正気なのかも怪しい。
……かなり、迫力というか……
ああ、これが現実なんだと、理解する。