第18章 もう1人の転校生、堀部イトナ
シロさんは続ける。
「また、触手の扱いは精神状態に大きく左右される。
予想外の触手によるダメージでの動揺。気持ちを立て直すヒマも無い狭いリング。
今現在どちらが優勢か。生徒諸君にも一目瞭然だろうねー」
シロさんの言葉が理解できないほど……私達は馬鹿じゃない。
「お、おい…これマジで行っちゃうんじゃないの」
生徒の反応などお構い無しにシロさんはまた話を続ける。
「さらには、献身的な保護者のサポート」
弱点⑱、特殊な光線を浴びると硬直する。
カッと照らされた殺せんせー、一瞬固まった。
「うっ…」
その一瞬を、見逃さない。
堀部くんは殺せんせーに勢いよく触手を振り下ろした。
ついで切れる殺せんせーの触手。しかも2本も。
「…!!」
皆は驚きの連続で、もはや声が出ない。
「フッフッフ、これで脚も再生しなくてはならないね。なお一層体力が落ちて殺りやすくなる」
ガクッと肩を落とす殺せんせーの前に、堀部くんは立ち塞がった。
「…安心した。兄さん、俺はおまえより強い」
殺せんせーが追い詰められているのを、私達は黙って見ていた。
……まともに殺しに行ったこともない私と違って、皆は眉をぎゅっと顰めて悔しそうだ。
次々出てきた弱点も、小さい違いも。
皆が……E組が、探して、見つけて、殺したかったんでしょう?
……私は、もう出来ないよ。
帰ることもそうだけど、殺せんせーを、人間として見てしまったから……。
殺せんせーは触手を再生した。
「脚の再生も終わったようだね。さ…次のラッシュに耐えられるかな?」
シロさんの言葉に殺せんせーはゆっくりと答えた。
「…ここまで追い込まれたのは初めてです。
一見愚直な試合形式の暗殺ですが…実に周到に計算されている。
あなた達に聞きたい事は多いですが…まずは、試合に勝たねば喋りそうにないですね」
触手をポキポキと鳴らす殺せんせー。
……どうやって鳴らしてんだ?
「…まだ勝つ気かい? 負けダコの遠吠えだね」
上手いこと言ったみたいな顔してんじゃねぇ!!
……と言いたいが我慢。
「…シロさん。この暗殺方法を計画したのはあなたでしょうが…ひとつ計算に入れ忘れてる事があります」