第18章 もう1人の転校生、堀部イトナ
「どこでそれを手に入れたッ!! その触手を!!」
顔は真っ黒、ど怒り。
「君に言う義理はないね、殺せんせー。だがこれで納得したろう。両親も違う、育ちも違う。だが…この子と君は兄弟だ」
堀部くんの焦点が合わない目がこちらを向く。
私は思わず目をそらした。
「しかし怖い顔をするねぇ。何か…嫌な事でも思い出したかい?」
シロさんが煽るように笑う。
殺せんせーは触手を再生させながらクルリと振り向いた。
「…どうやら、あなたにも話を聞かなきゃいけないようだ」
「聞けないよ、死ぬからね」
シロさんが手を軽く上げる。
ダルンとしている腕の裾から、光がカッと皆を照らした。
一方の殺せんせーは…どこかおかしい。
「この圧力光線を至近距離で照射すると、君の細胞はダイラタント挙動を起こし、一瞬全身が硬直する。
全部知ってるんだよ。君の弱点は全部ね」
そのまま親指を下に向けるシロさん。
「死ね、兄さん」
堀部くんが上から殺せんせーを襲った。
そのまま連続で触手を繰り出す。明らかにほぼ全部当たっている。
「うっ…うおおっ…」
「殺ったか!?」
「…いや、上だ」
寺坂が上を睨んで言った。
殺せんせーは教室の蛍光灯にぶら下がっている。
「脱皮か…そういえばそんな手もあったっけか」
脱皮は殺せんせーのエスケープの隠し技。
一月に一度しか使えない、奥の手。
まだ全面戦闘開始三十秒くらいなのに……!!
堀部くんは皮の亡骸からスポッと触手を抜いてまたヒュッと空を切る。
「でもね殺せんせー。その脱皮にも弱点があるのを知っているよ」
蛍光灯に向かって堀部くんは触手を繰り出す。
「にゅやッ」
それをすんでのところで交わす殺せんせー。
「その脱皮は見た目よりもエネルギーを消耗する。よって直後は自慢のスピードも低下するのさ」
弱点⑯。脱皮直後。
「常人から見ればメチャ速い事に変わりはないが、触手同士の戦いでは影響はデカいよ」
「ううっ」
殺せんせーは堀部くんの触手の攻撃を捌くのに精一杯だ。
「加えて、イトナの最初の奇襲で腕を失い再生したね。それも結構体力を使うんだ」
弱点⑰、再生直後。
「二重に落とした身体的パフォーマンス。私の計算ではこの時点でほぼ互角だ」