第18章 もう1人の転校生、堀部イトナ
堀部くんは殺せんせーに向かって指を指すが、殺せんせーは全く動揺しない。
「強い弱いとはケンカの事ですかイトナ君? 力比べでは先生と同じ次元には立てませんよ」
「立てるさ」
……堀部くんも、動揺はしない。
スッとようかんを取り出して、殺せんせーに渡したようかんと並べる。
「だって俺達、血を分けた兄弟なんだから」
堀部くんは事も無げに言ったが、教室の皆は目を丸くした。
「き、き、き、き、兄弟ィ!?」
周りがとんでもなく戸惑うのを傍目に、堀部くんはようかんの包装紙を噛みちぎった。
「負けた方が死亡な。兄さん」
ようかんをもぐもぐ食べながら、殺せんせーを見つめる堀部くん。
その焦点はどこか合っていない。
「兄弟同士小細工は要らない。兄さん、おまえを殺して俺の強さを証明する。
時は放課後、この教室で勝負だ」
いつもあまり表情を出さない殺せんせーも、さすがに動揺の色を隠せていない。
「今日があんたの最後の授業だ。こいつらにお別れでも言っておけ」
堀部くんはそう言って雨の中外へと出ていった。
先程自分で壊したカベから。
数秒経たずうちに皆が殺せんせーを問い詰める。
「ちょっと先生兄弟ってどういう事!?」
「そもそも人とタコで全然違うじゃん!!」
「いっ…いやいやいや!! まったく心当たりありません!先生生まれも育ちもひとりっ子ですから!! 両親に『弟が欲しい』ってねだったら…家庭内が気まずくなりました!!」
そもそも親とかいるのか!? の総ツッコミが聞こえる……。
……ここは、嘘、なのかな。
殺せんせーの過去は、だって……。
私は軽く首を振った。
……ここだと、モロ漫画に入っちゃうからあまり言葉は言えない。
だからこそ、私は今を考えなければならない。
殺せんせーの過去っていう『前のこと』じゃなくて、『これからの事』。
……それにしても。
さっき、シロさんと目が合った気がしたのは……気のせいかな?