第18章 もう1人の転校生、堀部イトナ
皆が黙り込んでしまったのを見計らったかのように、教室の扉が開く。一斉にみんなは振り向いたが、私は冷静だった。
……この先が分かる、私だけ……冷静だった。
扉の奥から出てきたのは、巨体……といっても1m80cm前後で、白布で包まれた人がぬっと入ってきた。
皆に手をかざし……ポンッと鳩を出す。
手品をいきなりし出す所を見ると、なんとも空気が読めない人だな。この場にいるからこそ分かる、『?』の空気感。
「ごめんごめん驚かせたね。転校生は私じゃないよ。私は保護者。…まぁ白いし、シロとでと呼んでくれ」
なかなかに陽気な空気を出すが、私は警戒を緩めなかった。
……これが、殺せんせーを最後まで追いつめる、シロの登場。
「いきなり白装束で来て手品やったらビビるよね」
「うん、殺せんせーでもなきゃ誰だって…」
渚君のセリフで殺せんせーを見るが、先程までの位置にはいなかった。皆があれ? という様子で探す。
ふと天井を見ると……。
ヌルヌル動ける液状化状態の殺せんせー。
ツーンとした顔ですましている。
「ビビってんじゃねーよ殺せんせー!!」
「奥の手の液状化まで使ってよ!!」
「い、いや…律さんがおっかない話するもので」
殺せんせーの弱点⑮、噂に踊らされる。思わぬ形で露呈した。
「初めましてシロさん。それで肝心の転校生は?」
慌てて洋服を被る殺せんせーに、みんなは困り顔で笑ったり、見つめたり。
「初めまして殺せんせー。ちょっと性格とかが色々と特殊な子でね。私が直で紹介させてもらおうと思いまして」
はい、おくりもの、といってようかんを渡すところはなかなか社交的だ。
ふ、とシロ…さんが渚君の方を見た。
……ついで、私の方も。
(え?)
このシーンは、渚君の方しか見ないはずだけど……。流れで見たのかな?
「何か?」
殺せんせーも視線に気付いたのだろう。
不審そうにシロさんに問う。
「いや、皆いい子そうですなぁ。これならあの子も馴染みやすそうだ。席はあそこでいいのですよね殺せんせー」
シロさんが指さしたのは、私の隣だ。カルマ君とは逆側の、隣。
「ええ、そうですが」
それを確認したシロさんは、満足そうに微笑んだ。