第16章 LとRの組み合わせ
イリーナ先生がふわっと上着を脱ぎ、露出の激しい黒服になる。
「またモーションかけてんな。」「無理じゃね?」等のクラスの囁きは、きっと聞こえてないだろう。
何せ、イリーナ先生は今大きな勝負をしているのだから。
イリーナ先生はさりげなく洋服を地面に置き、烏間先生が座っている木の幹をぐるりと回った。
烏間先生が面倒くさがるように座り直す。
……いよいよ、だ。
イリーナ先生が軽く歩き出す。
烏間先生が警戒を強めると……。
烏間先生の足にさっきの洋服がもつれて飛んだ。
表現だけだとこれしかなくなっちゃうんだけど、飛んだ。
先ほどさりげなく置いた洋服にワイヤーが仕掛けられていて、それに気付かなかった烏間先生は、思いっきりワイヤーを引いたイリーナ先生に『しか』警戒を向けていなかった。
ワイヤーは、引っ張れば動く。
そして、烏間先生の足に引っ掛かったワイヤー込みの洋服は、イリーナ先生に引っ張られた勢いで飛んで、烏間先生も……という訳。
バランスを崩した烏間先生の元に一気にかけより、そのままマウントを取った!
「うおお烏間先生の上を取った!!」
「やるじゃんビッチ先生!!」
教室の皆も大歓声だ。
そのまま刺そうとするが。
その手は食い止められた。もちろん、烏間先生によってだ。力勝負ではあっさり負けてしまうだろう。
それでも、イリーナ先生は諦めなかった。
力を込め、烏間先生に何かを言う。
多分……ってかこれしかないんだけど、『殺らせてほしい』って言ってるはず。
10秒ほどやり取りをした後、烏間先生はナイフから手を離した。
そして、降参、というように手を上げる。
そのままの勢いで、ナイフは烏間先生の体に当たった。
「当たった!!」
「すげぇ!!」
「ビッチ先生残留決定だ!!」
ここぞとばかりに皆も盛り上がった。
私もホッとため息をつく。
ロヴロさんが近付いてイリーナ先生になにか話しかけた。昨日とさっきの表情よりかは、幾分穏やかだ。
イリーナ先生はロヴロさんの言葉を聞いて、パッと顔を明るくさせた。
「もちろんですセンセイ!!」
という言葉が窓越しに微かに聞こえる。
……イリーナ先生、良かったね。
私は心の中で呟いた。