第16章 LとRの組み合わせ
烏間先生との放課後訓練。
……の前の教員室。
さっきイリーナ先生が怒って出てったのを見計らって私は扉を開けた。大方くだらない事で喧嘩したんだろう。
最近は訓練も精度が上がったものも増えてきて飽きない。
「イリーナ先生って全員にディープキスしてますよねー、正解しても間違えても」
「何で俺にそんな話をした」
「いや、ふと思ったので誰かに話したくなって」
「東尾さんもされたのか」
「私は全力で避けました。ファーストキスの相手くらい選びたいわって言って全力で。本当に全力で」
いつだったかの授業を思いだしながら私は笑った。
「そういえば今日の訓練って……」
と言いかけたその時、烏間先生の動きがスッと止まった。
「……なにか音がした気がする」
「え、全く聞こえませんでしたけど……」
「悪い、ちょっと行ってくる」
そう言って駆け出す烏間先生。
……あ!!
そうだ、今回は……っていうか今日は。
イリーナ先生を日本に斡旋した殺し屋を雇う『殺し屋屋』……ロヴロさんが来る日だ!!
確かロヴロさんも元暗殺者で……後進の暗殺者を育てて各国に派遣して、財を成してる……。
その人が今日来たんだ。
イリーナ先生を、この教室に似合わないと……思って。
……こっそり見に行くか。
私は廊下伝いに理科室に行った。
「……今日限りで撤収しろ、イリーナ。この仕事はおまえじゃ無理だ」
おっと……この場面か。
私は廊下にしゃがみこんだ。
「…? ずいぶん簡単に決めるな。彼女はあんたが推薦したんだろう」
烏間先生が不思議そうに腕を組む。
「現場を見たら状況が大きく変わっていた。もはやこいつはこの仕事に適任ではない。
正体を隠した潜入暗殺ならこいつの才能は比類ない。
だが一度素性が割れてしまえば一山いくらのレベルの殺し屋だ」
……厳しい評価。さすがイリーナ先生の先生だ。
「あげく見苦しく居座って教師のマネゴトか。こんな事をさせるためにお前を教えたわけじゃないぞ」
イリーナ先生を上から見下ろしている様子が少し見える。