第15章 梅雨の話
殺せんせーのその言葉を合図に杉野君が下の皆さん……つまり、岡野さん前原くん磯貝君に連絡をとる。
もう窓から身を乗り出さなくても大丈夫かな。
私は窓際に座り込んだ。
数分して。
土屋さんと瀬尾くんの様子がおかしい。
お腹を押さえ、言い合っている。
……効いてきたな。
さっき、速水さんと千葉君が入れた弾の中身。
愛美ちゃんが後ろで杉野君に説明している。
「マグネシウムを主成分として調合しました。市販薬の数倍の刺激を大腸に与えます。
要するに強力下剤。
『ビクトリア・フォール』と名付けました」
杉野君はその説明を聞いてうわぁ……という顔をしている。
確かあん時気になって検索かけたんだよなあ……。
ビクトリアは勝利の女神、フォールは落ちる、平伏する……とかいう意味。
愛美ちゃんが意識してるのかどうかはおいといて、恐ろしいと思ったのは事実。
さっきお腹を痛めた2人はトイレに向かったはず。
でもトイレには入れない。
おばあちゃん(茅野ちゃん)が入ってるからね。
そしてさっきの茅野ちゃんの言葉を思い出すのだ。
『100m先のコンビニにはあったけど』
雨が降る中100m先のコンビニまで。
それでも漏らすよりはマシなのだろう。
2人は傘を取ってダッシュで出てきた。
「何一緒に来てんのよ!! あんた男なんだからそこらでしなさいよ!!」
「できるか!!」
……ちょっと追ってみよう。
丁度窓の下には草木がある。
ここは2階。行けないことはないだろう。
「ちょっと行ってくるね、杉野君!」
「えっ!?」
私は出来るだけ着地のショックが少ないように、手を離すタイミングを少し遅らせて着地した。
「おい東尾!?」
杉野君が焦った様子でこちらを見ているが気にしない。
前30m程前に走る2人が見える。
……そろそろ3人の待機ポイントだな。
お腹を押さえてコンビニ(のトイレ)へ走る2人が木の下にさしかかる。ここから見るとよく見えるな。
3人がナイフを振り下ろし、枝と葉を落とす。
総重量がかなりあるであろう葉と枝は一気に2人の上に落下。
「ぎゃっ!!」
2人揃って泥水、毛虫まみれ。
「ひっどい何コレズブ濡れ!! ひゃああ毛虫ィ!?」
土屋さんが絶叫。