第15章 梅雨の話
「奥田さん、頼んでおいた例の弾は?」
「は、はい。急いで調合しました」
愛美ちゃん、あんまり見ないと思ったらどうやら理科室にこもって作ってたらしい。
「BB弾の形にそろえるのに苦労したけど」
その弾を射撃成績1位の千葉君と速水さんが受け取り、弾を込める。
すると杉野君が渚君に連絡。
私はよく聞こえるように窓から身を乗り出してふたりを見た。
……うん、ギリギリ聞こえる、かも……。
「あなた、この近所にトイレあるかしら」
……すごい、茅野ちゃん。ちゃんとおばあちゃんの声になってる……。
「100m先のコンビニにはあったけど…」
「おいおい、ここで借りりゃいいじゃろが。席は外でもこの店の客なんだから」
……渚君も、磨いた刃をちゃんと使えてるね。
「そうでしたそうでした。ちょっと行って来ますよっと」
「やだ、ボケかけ。あーはなりたくないね私達」
「くっくっ」
……復讐相手の二人の声もギリギリ聞こえるな。
あとで、痛い目あうけど。
茅野ちゃんが店内に入ったのを見計らったように渚君がサラダとコップを盛大に落とす。
「お、しまっ…」
ガシャン、ガランガランとかなりうるさい。
土屋さんと瀬尾くんの意識が音にいった隙に千葉君と速水さんが銃を撃った。
1ミリのズレもなく二人のコップに弾が入る。
「ヒット!!」
「マッハ20の目標に比べりゃチョロいね」
「おお!!」
こっちが喜びに浸る一方であっちは……キレてる。
「いーかげんにしてよさっきから!!」
「ガチャガチャうるせーんだよボケ老人!!」
全く、頭いい人は心が狭いなあ。
……偏見かな?
渚君はかなり上手い演技で、直接2人と話しても全く気付かれない。
「あっ…ああ…すいませんのぅ…連れがトイレから帰ったら店出ますで」
そういったおじいちゃん(渚君)に一旦怒りが収まったのか、2人は弾が入ったコーヒーを飲んだ。
「ったく…客層悪いな今日は」
「ごめんねぇ、普段はスマートな客ばかりなのに」
2人が飲んだのをちらりと確認した渚君は微笑んだ。
こちらでは殺せんせーがどこから持ってきたのかマグカップを食べている(語弊ではない)。
「ヌルフフフ、あとは下の皆さんにお任せです」