第14章 自律思考固定砲台の転校生
ふと、殺せんせーが焦りの表情でこちらを見ていることに気づいた。
「大丈夫だよ、殺せんせー。ありがと!」
殺せんせーは無言でコクリと頷いた。
返事する間も無いほど速いスピードの銃弾を避けているからだろう。
……明日、どうなるかな。
私は痛む左手を軽く押さえ、冷静に砲台を見つめた。
……翌日。
HRの時間。
ただ、いつもとは流れる空気が少し……少しだけ、違った。
「朝8時半、システムを全面起動。今日の予定、6時間目までに215通りの射撃を実行。引き続き殺せんせーの回避パターンを分析…」
そう言い出した律は、途中で言葉を止めた。
当然だろう。
砲台の周りには、しっかりとガムテープが巻かれていた。
銃を取りだそうとギシギシ軋むのが分かるが、全く動かない。
「…殺せんせー。これでは銃を展開できません。拘束を解いて下さい」
皆はそう言い放つ砲台を、冷たい目で見つめた。
「…うーん、そう言われましてもねぇ」
ポリポリと頭をかく殺せんせー。
「この拘束はあなたの仕業ですか? 明らかにわたしに対する加害であり、それは契約で禁じられているはずですが」
それは、殺せんせーの仕業ではない。
「違げーよ、俺だよ」
寺坂が軽く睨みをきかせて言った。
隣のカルマくんも何も言わない。
「どー考えたって邪魔だろーが。常識ぐらい身につけてから殺しに来いよポンコツ」
「…ま、わかんないよ機械に常識はさ」
「授業終わったらちゃんと解いてあげるから」
皆の優しくも厳しい言葉。
「…そりゃこうなるわ。昨日みたいなのずっとされてちゃ授業になんないもん」
杉野くんの諦めの言葉がやけに綺麗に聞こえる。
自律思考固定砲台はそんなみんなを機械の目で眺めていた。