第13章 修学旅行の時間!
「私、あっちの世界で過ごしてたの。お父さん、お母さん、弟の四人家族。
あともう2人大事な人がいて……
親友の菜津と、菜津の彼氏の仁くん」
イリーナ先生は黙ってこちらを見ている。
「……カラスマから聞いたわ。アンタが帰りたいようにも、帰りたくないようにも見えるってね」
そう、イリーナ先生は言った。
「…多分、私でもよく分かってないんだけど……帰りたい理由は、その5人。
また会いたいし、話したい。こんな事があった、あんな事があった……もう1度、会いたい」
今でも鮮明に思い出せる、私の部屋、家、学校。
通学路だって、途中にあるパン屋のメニューだって。
「……私が、帰りたくない、って……どこかで思ってる理由は…………」
動悸が心臓に悪く響く。
「……私が、仁くんを…親友の、菜津の彼氏を好きだった…から……」
イリーナ先生は軽く目を伏せた。